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PRESENTATION
モノづくりの常識を打ち破る
スラリー・粉体技術
要素研究部門
スラリー特任研究室要素研究部門に新設された、リサーチアドバイザーの中村室長が率いるスラリー特任研究室。ここでは、「プロセス技術の革新によって、将来の電動化時代のモノづくりを実現したい」という熱い想いを持ったメンバが集い、「夢のスラリー・粉体プロセス技術」の確立に向け、日々邁進しています。
サスティナブルな社会を実現するためにハイブリッド車が普及し、さらにプラグインハイブリッド車も期待される中、ついに電気自動車や燃料電池自動車が市販される時代が到来しました。
これら次世代の自動車は、二酸化炭素の排出ゼロという環境性能だけでなく、その卓越した走行性能でも注目を集めています。それらは、未来の社会システムを変える可能性を持つ一方で、その普及には大きな障壁が待ち受けています。そのうち、価格(生産コスト)の低減は、克服すべき課題の一つでしょう。もっと安く生産できれば、電動化の時計の針を一気に前に進めることができるかもしれません。
スラリー特任研究室では、次世代自動車の中核部品であるリチウム二次電池や燃料電池の生産プロセス技術の研究を行っています。与えられたミッションは、プロセス技術の革新により大幅な低コスト化を図るとともに将来の電動化時代のモノづくりを実現することです。この目標に対しチーム一丸となって取り組み、更にその先まで見据えている特任研究室の取り組みについて紹介します。
リチウム二次電池、燃料電池の電極は、薄くて非常に目の細かいスポンジ状の膜からできています。この膜を、粉状の物質を液体(溶媒)に混ぜた分散液(スラリー)から、均一、均質に作る技術がスラリー技術です。図1にそのプロセスを示します。成膜時のミクロレベルでの構造制御が電池性能を決める要因となる一方で、その過程に一か所でも不具合があると目指す構造にはなりません。このためチームには多彩な視点を持つ、研究者が集まっています。
低コスト化への切り口は、最終的に蒸発させる溶媒を減らすことです。これにより乾燥工程のスペース縮小や時間短縮ができ、大幅なコスト低減が期待できます。
一方、溶媒を減らすと「分散液」ではなく「湿った粉」(湿潤粉体)のような状態になります。この粉体とも液体とも言えない状態を扱った研究は未だ確立されていません。まさに手さぐりの状態で研究を進めています。
メンバの草野さんは、湿潤粉体の特性と加工性との関係を調べ、均一に成膜するための技術構築を進めています。また、熊野さんは高分子材料のバックグラウンドを活かして、乾燥工程で発生するひび割れ等の不具合のメカニズムの解明とその対策に取り組んでいます。そして、プロセス全体の制御技術構築を担っているのは松永さんです。原材料の特性および製造条件と最終的に得られる材料の特性や品質との相関関係を調べることで良品条件の探索を行っています。
スラリー中の粉体の分散状態や最終物の構造などの観察、解析は秋元さんと樋口さんが担当しています。秋元さんは凍結試料による走査型電子顕微鏡での直接観察、樋口さんは放射光を用いた解析を得意としていて、これらの観察、解析結果がチーム全体の新たな技術開発の方針提示に大きな役割を果たしています。
このように成膜対象のスラリー状態から最終物までの時空間構造を明らかにすることが、課題解決の大きなカギになっています。
チームの目指す究極の目標は、溶媒を全く使わず粉体のまま最終的に目的とする膜構造を作製することです。これは、もはやスラリーとは呼べない材料を扱う技術になります。この溶媒フリーの粉体成膜法は、低コスト化にとどまらず、最終物の構造を自由に制御できる可能性があります(図2)。電極膜が、ある特定の構造を持つときに、電池性能が大きく向上することが知られています。しかし、現在はそれを成形する技術はありません。粉体成膜技術は電池性能の向上にもつながる夢のプロセスなのです。
スラリー特任研究室では、スラリーから始まり、湿潤粉体を介して、溶媒フリーの成膜技術研究にまで挑戦しようとしています。そして、未来の車を世界に届けるため、いち早く技術の完成を目指しています。
スラリー特任研究室のメンバ
さまざまな専門性、経験を持った研究メンバが集まったスラリー特任研究室。しかし、スラリー・粉体技術への熱い想いは共通です。若手、ベテランの垣根を越え、常に活発な議論が行われています。