燃料電池の未来を拓く
~触媒層内の”水”を定量的に評価する新手法の確立~
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一般財団法人 総合科学研究機構、株式会社 豊田中央研究所、および国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構の研究グループは、中性子小角散乱法※1を用いて、固体高分子形燃料電池内部の触媒層におけるアイオノマー※2の含水率を定量化する新たな評価方法を提案しました。
本研究成果は、Elsevierの化学工学分野の専門誌「Chemical Engineering Journal」に2025年4月15日に掲載されました。
【発表のポイント】
◆燃料電池内部の触媒層における水量を定量的に評価する新しい手法を開発。
◆中性子小角散乱法を用いて、燃料電池の性能に直結する触媒層内のアイオノマーの含水率を、従来より短時間で定量的に評価する手法を開発。
◆燃料電池の作動中における触媒層を含む燃料電池内部の水量変化と発電性能関係性を明らかにし、次世代燃料電池の開発を加速。
新評価方法で定量化された燃料電池触媒層内の水分布の様子
【論文情報】
タイトル: Confined Water Distribution in the Ionomer within the Catalyst Layers of Polymer Electrolyte Fuel Cells: A Small-Angle Neutron Scattering Study
著者: 岩瀬裕希*1 、有馬寛*1 、原田雅史*2 、熊田高之*3
*1: 総合科学研究機構 *2: 豊田中央研究所 *3: 日本原子力研究開発機構
掲載誌: Chemical Engineering Journal
DOI: https://doi.org/10.1016/j.cej.2025.161321
【補足情報】
※1 中性子小角散乱(Small-angle Neutron Scattering、SANS)法:
量子ビームの一種である中性子線を試料に照射し、小さな角度(小角)で散乱される様子を測定する手法。X線や電子線とは異なり、中性子は水素などの軽い元素に対しても高感度であり、物質内部の水分や有機材料などを詳細に評価しやすいのが特徴。
※2 アイオノマー:電気(イオン)を通す性質を持つ高分子材料(イオン伝導性高分子)。