電子ジャーナル 技報R&Dレビュー

要旨集●Vol.36 No.3(2001年9月発行)
 研究報告
p.27

二宮芳樹,加藤武男, 小島祥子

 生産性に優れた構造を有する自動車レーダ用のミリ波帯導波管スロットアレイアンテナを新たに開発した。スロット素子を導波管の狭壁に配置し,導波管内を流れる電流が小さくなる広壁の中央部分で2つの部品を分割し,接合する構造としているため,互いに密着する必要がない。さらにスロット素子の配列を制御し,スロット素子の周囲に円筒キャビティを配置することで,従来のように導波管内に誘電体材料を挿入することなく,グレーティングローブと呼ばれる不要放射を抑圧することを可能とした。設計したアンテナをマグネシウムの金属射出成型を用いて試作し,測定した結果,76GHzにおいて55%のアンテナ効率を達成できた。この値は従来のミリ波アンテナに比べ,最も高い。金属の切削加工により製作した同じ構造のアンテナと同一の高い効率が得られており,提案したアンテナの有効性を確認することができた。

(672 k)

TOP▲


P.35

榊原久二男,渡辺俊明 , 佐藤和夫,西川訓利

 市場事故での車両の衝突安全性や乗員保護装置の有用性を確認するには,乗員の受傷状況を再現し,傷害発生メカニズムを明らかにする必要がある。特に重症患者の致死的内臓損傷の存在を予測する上では,詳細な傷害解析が必要と考えられる。本報告では,骨格や軟組織がモデル化されており,計算機による傷害予測が可能な人体全身FE (Finite Element) モデルTHUMS (Total HUman Model for Safety) を用いて,市場交通事故での乗員傷害を再現した結果を紹介する。対象とした事故は車両単独の前面衝突事故であり,事故条件が傷害内容に及ぼす影響についても考察した。その結果,肋骨骨折及び複数の傷害の受傷予測結果から,提案した交通事故傷害の再現方法により事故傷害が再現可能であることを示すと共にTHUMSが傷害再現のための有効なツールであることを確認した。

 

(584K)

TOP▲

 

P.41

土屋智由

 多結晶シリコンの3層構造を用いたヨーレートセンサ(振動型ジャイロスコープ)を開発した。このセンサでは膜厚2mmの振動子マスの上部に電極を形成することでコリオリ力により発生する基板垂直方向の振動を高精度に検出することができる。励振・検出の共振周波数の調整は励振振動を検出する櫛形電極に印加するバイアス電圧を制御することで最適な値に調整した。また,ヨーレート出力のオフセット電圧は振動子の加振電圧振幅を左右の櫛形電極で変化させることで減少させた。このセンサで分解能1deg/secを達成した。

 

(828K)

TOP▲

 

p.47
   

武井一剛,安田栄一, 土居俊一,前田節雄

 

 近年,車両の操縦性・安定性向上はめざましく,高速直進時の安定性向上は,小さくても安全でかつ省燃費であるコンパクトカーの実現をもたらしている。これらの車両特性,パフォーマンスの設計においては,ドライバの感受性といった品質評価感度をも考慮する必要がある。すなわち,高速走行時の車両運動の安定性について考えるならば,多くの評価項目の中に人間の感知し得るヨー運動知覚特性などを考慮する必要がある。
 本研究では人間のヨー回転振動に関する知覚感度特性を明らかにするため,6自由度の加振装置を用いて,人間のヨー方向の回転に対する知覚感度や振幅の変化に対する弁別特性を調べた。
実験結果によるとヨー運動の知覚能力は,0.1Hz以下の低周波の動揺に対しても充分感度を有し,さらに,このような低周波領域においても,振幅変化に対して検出能力のあることが明らかとなった。これらの結果は,高速走行時における安定性評価の知覚感度を含めた設定基準を明確にすることにより,人間特性を考慮した車両運動特性設定法を新たに構築し得ることを示している。

(152K)

TOP▲