電子ジャーナル 技報R&Dレビュー

要旨集●Vol.36 No.4(2001年12月発行)
 研究報告
p.47

土屋能成,中西広吉, 松井宗久,田中利秋,
鈴木寿之,野上芳和, 明石忠雄

 一層の高生産性を実現するために,生産工程を設計する時点で量産時の生産要件を考慮できるシステムの開発が望まれている。今回,熱間鍛造型の摩耗寿命を対象にして,金型寿命を予測する機能を組み込んだ工程設計システムを開発した。本システムを開発するにあたり,熱間鍛造金型における損傷形態について経時的に調査した結果,金型の寿命をもたらす変形や摩耗損傷の発生と進行は熱負荷による金型の軟化挙動と密接な関係があることがわかった。本システムの骨格は熱連成変形解析と温度解析,金型の軟化解析,および損傷マップによる寿命判定とからなる。損傷マップは寿命時の損傷形態とCAEで求めた物理量を関連づけるために考案したもので,摩擦の厳しさを表す物理量と金型の繰返し加工に伴う強度低下を表す物理量の両軸からなる。金型の強度低下を表す指標として焼戻し軟化後の高温せん断強さと摩擦せん断力との比である降伏強度比を考案した。また本システムは軟化解析を行うための金型材料の焼戻しや高温変形抵抗のデータベースを備えている。本システムは金型寿命をふまえた工程設計に活用できる。

 

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P.55

藤塚徳夫,坂田二郎

 生産性に優れた構造を有する自動車レーダ用のミリ波帯導波管スロットアレイアンテナを新たに開発した。スロット素子を導波管の狭壁に配置し,導波管内を流れる電流が小さくなる広壁の中央部分で2つの部品を分割し,接合する構造としているため,互いに密着する必要がない。さらにスロット素子の配列を制御し,スロット素子の周囲に円筒キャビティを配置することで,従来のように導波管内に誘電体材料を挿入することなく,グレーティングローブと呼ばれる不要放射を抑圧することを可能とした。設計したアンテナをマグネシウムの金属射出成型を用いて試作し,測定した結果,76GHzにおいて55%のアンテナ効率を達成できた。この値は従来のミリ波アンテナに比べ,最も高い。金属の切削加工により製作した同じ構造のアンテナと同一の高い効率が得られており,提案したアンテナの有効性を確認することができた。

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