電子ジャーナル 技報R&Dレビュー

要旨集●Vol.36 No.4(2001年12月発行)
 解説・展望
P.41

堀之内成明

  空力騒音解析の現状と今後の課題について,当社で開発したシミュレータCOSMOS-Vを中心に解説する。本稿では空力騒音として特に風切り音とウィンドスロッブを取り上げる。また,ドアミラー鏡面の空力びびり振動も,ボディまわりの空気流の時間変動に起因して発生するという意味で空力騒音と同等な現象として扱う。

 一般に,空力騒音の圧力変動は,それを発生している流れ場の圧力変動に比べると桁違いに小さい。現状の数値計算技術では,前者を直接計算することは不可能であり,後者を計算した結果から間接的に騒音を予測・評価する。したがって,信頼性の高い空力騒音解析を行うためには,まず第一に流れ場の時間変動を精度よく計算することが肝要であり,COSMOS-Vではその目的を達成するために幾つかの特徴的な手法が導入されている。その一つが複雑な形状に対して質の良い計算格子を効率的に生成するための重合格子法である。また,物理量の保存性を十分に高い精度で満足する離散化手法としてコロケーション格子に基づく有限体積法を採用している。さらに,ウィンドスロッブをとらえるために,低マッハ数で微弱な密度変動を考慮した弱圧縮性流体モデルを開発した。以上の特徴を持つCOSMOS-Vによる計算の事例として,ワンボックス車のドアミラー鏡面空力びびり振動解析と3次元オープンキャビティでのウィンドスロッブ解析の結果を示す。

 

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