45巻3号 (2014.9)
特集
駆動・制動技術
Part Ⅰ.特集
特集概要
論文
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pages 1-11
日比野良一、宮部友博、大澤正敬、河野克己、大坪秀顕
自動変速機のクラッチ制御系には、摩擦係数や油温をはじめ様々な外乱があり、これらに出来るだけ影響を受けないことが求められる。本報告では変速機で広く用いられているフィードバックとフィードフォワード制御系を対象に、我々が提案するロバストな制御系の構築方法を述べる。
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pages 13-21
早川喜三郎、日比野良一、大澤正敬、村橋利得、好士直樹、加藤浩明
周波数特性の相違に基づいて、計測信号から道路勾配の影響を除く独自の手法で車両重両を推定した。車両実験の結果、本手法が高い推定精度と良好なエンジンブレーキ性能をもつことがわかった。
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4. Measurement of the Behavior of a Metal V-belt for CVTs
金属CVTベルトの挙動計測(1,795kB)
pages 23-30
谷裕文、山口裕之、服部治博、志水政紀、荒川一哉、服部勇仁
金属ベルト式無段変速機(CVT)のベルト挙動を計測可能な装置を開発し、1回転中にわたるエレメント傾斜角度の変化を明らかにした。また、CVTの高容量化には特に最減速時のプライマリプーリにおけるヨーイング角度の抑制が必要であることが分かった。
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pages 31-42
後藤良次、長沢裕二、松島徹
摩擦面の接触状態が影響するブレーキ鳴きを対象に、ディスクロータに埋設する荷重センサを開発し、アライメントや温度で接触状態が変化する様相を確認した。また、鳴きに対する接触剛性の感度を計算して接触領域を最適化する計算技術を開発した。
Part II.
スペシャルレビュー
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pages 43-56
中北清己
1990年代以降、乗用車用の高速直噴ディーゼルエンジンは動力性能、排気、振動騒音の総ての面で幾つかの段階を経て進歩を遂げてきた。その各段階で、当所は筒内現象の解明や性能向上に向けた方策の提示において鍵になる役割を果たしてきた。本稿ではそれらの概要を紹介する。
【日本語関連論文】
・中北清己 他, "高圧噴射によるディーゼル機関の燃焼・排気改善効果", 自動車技術会シンポジウム"ディーゼル燃焼の新しいみかた", No. 9303(1993), pp. 40-48.
・中北清己 他, "高圧噴射時のパイロット噴射パターンの最適化とその効果 (小特集エンジンシステム)", 日本機械学会論文集(B編), Vol. 59, No. 559 (1993-3), pp. 892-898. 論文閲覧はCiNiiへ(CiNiiは国立情報学研究所のサービスです)
・堀田義博 他, "小型高速DIディーゼルの燃焼改善-第1報 高速・全負荷時のスモーク生成要因", 自動車技術会論文集, Vol. 31, No. 3 (2000), pp. 5-10.
・堀田義博 他, "気流速度抑制によるHSDIディーゼル機関の高速時・スモーク低減", 自動車技術会論文集, Vol. 32, No. 3 (2001), pp. 17-23.
・堀田義博 他, "マルチ噴射によるHSDIディーゼルの排気・性能改善", 自動車技術会論文集, Vol. 36, No. 1 (2005), pp. 79-85.
・堀田義博 他, "高過給・高EGRと高圧噴射によるHSDIディーゼル機関の大幅排気低減(第1報)-排気の低減効果とその改善メカニズム-", 自動車技術会論文集, Vol. 37, No. 6 (2006), pp. 139-146.
・堀田義博 他, "高圧噴射と噴射率制御によるHSDIディーゼル機関の燃焼改善", 自動車技術会論文集, Vol. 39, No. 3 (2008), pp. 171-176.
・稲垣和久 他, "2燃料成層自着火による高効率PCCI燃焼(第1報)-EGRレスPCCI制御の実験的研究-", 自動車技術会論文集, Vol. 37, No. 3 (2006), pp. 135-140.
・稲垣和久 他, "高分散噴霧と筒内低流動を利用した低エミッション高効率ディーゼル燃焼-燃焼コンセプトの提案と単筒エンジンによる基本性能の検証―", 自動車技術会論文集, Vol. 42, No. 1 (2011), pp. 219-224.
・稲垣和久 他, "サイクルシミュレーションによるディーゼル燃焼の過渡性能予測 (第1報)-マルチゾーンPDFモデルを用いた燃焼予測法の開発-", 自動車技術会論文集, Vol. 38, No. 5 (2007), pp. 71-76.
・上田松栄 他, "サイクルシミュレーションによるディーゼル燃焼の過渡性能予測 (第2報)-燃焼モデルを利用した加速時エンジン性能推定-", 自動車技術会論文集, Vol. 38, No. 5 (2007), pp. 77-82.
・稲垣和久 他, "サイクルシミュレーションによるディーゼル燃焼の過渡性能予測(第5報)-'バーチャルエンジン適合' を可能にする全運転域での燃焼特性予測精度の向上-", 自動車技術会論文集, Vol. 43, No. 6 (2012), pp. 1221-1226.
論 文
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7. Memory Effect in a Lithium-ion Battery
リチウム二次電池におけるメモリー効果の発見(2,912kB)
pages 57-67
佐々木厳、右京良雄、Petr Novák
従来生じないとされてきたリチウム二次電池のメモリー効果を、正極材料としてすでに使われているLiFePO4において発見した。この現象を詳細に検討し、そのメカニズムを明らかにした。このメモリー効果を正しく理解、予測することで電池の充電状態推定をより正確に行うことができ、電池の効率的かつ安全な利用に貢献できると考えられる。
短 報
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8. Drowsy Driving Detection Based on Steering Maneuvers
操舵特性に基づく覚醒低下検出(610kB)
pages 69-71
西智樹、Pongtep Angkititrakul、吉田浩之、坂口靖雄、寺嶌立太、江副俊樹
ドライバの居眠り時の操舵パターンの変化を捕らえることにより居眠り運転を検 出する手法を開発した。この手法では居眠り時と覚醒時の操舵速度の周波数応答を算出し、各周波数でのスペクトル密度の確率分布間の距離に比例する重み付き周波数応答フィルタに基づき居眠り運転を検出する。これにより従来法に比べ8%低い等価エラー率を達成した。
【日本語関連論文】
・江副俊樹 他、“操舵特性の変化に基づく覚醒低下検出”、自動車技術会学術講演会前刷集、No. 103-10 (2010), pp. 7-10.
・江副俊樹 他、“操舵特性の変化に基づく覚醒低下警報システムの基礎検討”、日野技報、Vo. 62 (2011). -
pages 73-75
増田糧、河村清美、永岡真
燃料噴射ノズル内で燃料とキャビテーション気泡を混合させて噴射する新しい燃料噴射方法を提案した。試作した外開弁形式ノズルの噴霧計測の結果、ノズル直下では均質で細かな網目構造の燃料噴流が観察され、従来ノズルよりも高微粒化かつ低貫徹力の噴霧特性が得られた。
【日本語関連論文】
・増田糧 他,“ノズル内流れの数値解析によるキャビテーション気泡混合燃料噴射方法の検討”,日本機械学会論文集(B編),Vol. 78,No. 793 (2012), pp. 1584-1597.
・河村清美 他,“キャビテーション気泡混合噴射法による微粒化メカニズムと噴霧特性”,日本機械学会論文集(B編),Vol. 78,No. 793 (2012), pp. 1598-1608. -
pages 77-79
伊藤誠悟
本論文では、無線LAN位置推定における電波地図をGaussian Processを用いて表現する。これにより電波強度の平均値に加え、電波地図の不確かさも表現できる。提案地図を用いた位置推定手法をParticle Filterにより実現した。
【日本語関連論文】
・情報処理学会シンポジウムシリーズ,Vol. 2011, No. 1 (2011),pp. 439-448.