46巻2号 (2015.6)
特集
量子ビーム材料解析
Part Ⅰ.特集
特集概要
論文
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pages 1-9
野中敬正、林雄二郎、堂前和彦
SPring-8豊田ビームラインにおいて開発された2つの主要技術、最速10ミリ秒でスペクトル取得可能な高速X線吸収分光装置、および、金属材料内部を非破壊で方位・歪マッピング可能な走査型3次元X線回折顕微鏡について述べる。
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3. Operando XAFS Study of Automotive Exhaust Catalysts
自動車排気浄化用触媒のOperando XAFS解析 (1,714kB)pages 11-19
長井康貴、田辺稔貴、堂前和彦
放射光を用いたX線吸収分光法は、触媒が実際に作用する状態(Operando)において、触媒の物理化学的な状態変化を追跡できる有効な手法である。この手法により、自動車排気用触媒の作動原理に対する重要な知見を得ることが可能となる。
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pages 21-28
片岡恵太、成田哲生、菊田大悟、田島伸
半導体デバイスの特性を支配する表面・界面におけるエネルギーバンドの評価は重要である。CdS/CZTS界面の価電子帯オフセットとエッチング前後で変化するp型GaN表面のバンド曲がりを例に、硬X線光電子分光法を用いた半導体表面・界面のエネルギーバンド評価法について概説する。 -
5. Ion Diffusion in Solids Detected with Muon-spin Spectroscopy
ミュオン分光で視る固体内のイオン拡散(958kB)pages 29-36
杉山純、向和彦、野崎洋、原田雅史、梅垣いづみ
固体内でのイオン移動は電池動作の基本原理である。しかし、イオンの拡散の容易さを示す指標である拡散係数を正確に求める際には、多くの困難が伴う。例えば、多孔性電極の反応面積や活物質内の磁性元素の影響で、正極材料の正確な拡散係数は不明だった。我々は、従来とは全く異なる手法である素粒子ミュオンの崩壊を利用して、LiやNaの拡散に伴う微小な磁場変動を捉え、拡散係数を見積もる手法を開発した。原理・応用・将来を簡単にまとめる。
【日本語関連論文】
・杉山純, "ミュオン素粒子を用いたリチウム電池材料研究", 放射線, Vol. 39 (2013), pp. 77-83.
・杉山純, "ミュオンを用いた材料解析", まてりあ, Vol. 49, No. 11 (2010), pp. 515-520.
・杉山純, "μ+SR で視る電池材料", 固体物理, Vol. 44, No. 11 (2009), pp. 865-875.
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pages 37-43
野崎洋
*There is an Erratum associated with this report.
Liイオン電池材料のLiイオン拡散挙動を中性子準弾性散乱法(QENS)で解析した。正極材料LiMn2O4のLiイオン伝導度は400 Kで約10-8cm2/sと求められた。固体電解質LixLa3(Zr,Nb)2O12の活性化エネルギーは組成に依存せず、バルクより低い約20 kJ/molだった。これは材料本来の値を見たためと考えられる。
Part II.
論 文
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7. Asymptotic Analysis of the Lattice Boltzmann Method and Its Applications
格子ボルツマン法の漸近解析と応用(943kB)pages 45-55
吉田広顕
格子ボルツマン法(LBM)のアルゴリズムが、流体運動を記述する方程式の近似解を与えることを証明するための漸近解析法についてまとめた。漸近解析法の応用として物理モデルに合わせて新しいLBMのアルゴリズムを開発した例をいくつか紹介する。
【日本語関連論文】
・小林敬之 他, "拡散現象に対する格子ボルツマン法における2相界面での境界処理法", 第27回数値流体力学シンポジウム講演予稿集 (2013), D08-1.
・吉田広顕 他, "格子ボルツマン法における反射-透過型境界条件について", 第25回数値流体力学シンポジウム講演予稿集 (2011), E03-3.
・吉田広顕 他, "移流-拡散方程式に対する多緩和時間モデルを用いた格子ボルツマン法", 日本機械学会計算力学講演会講演論文集, Vol. 23 (2010), pp. 31-32.
短 報
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pages 65-67
小林孝雄、杉浦豪軌、勝山悦生、河口篤志、平野麻衣子
インホイールモータ車では駆動力配分による乗り心地制御が可能となる。本制御の効率を向上させるために車両運動・エネルギー統合解析を行い、エネルギー消費メカニズムを明らかにした。
【日本語関連論文】
・小林孝雄 他, "インホイールモータによる車両運動制御時のエネルギー解析", 自動車技術会学術講演会前刷集, No. 146-11 (2011), 20115762.