当社の岩本正実らが東京大学 次世代知能科学研究センター國吉康夫教授らと共同で行った研究成果が、 Scientific Reportsに掲載されました。

 

乗り物の揺れや環境中の振動は、眠気や不快感を引き起こす一方で、覚醒や快適さをもたらす場合もあります。こうした身体振動が人の認知機能にどのように影響するのかを理解することは、安全性や快適性の高い移動環境を設計する上で重要です。しかし、振動中の脳活動を直接測定することは技術的に難しく、仕組みの解明は十分に進んでいませんでした。従来研究では、心拍や呼吸といった生理指標と認知機能の関係が示唆されてきましたが、脳・心拍・呼吸を統合的に扱う理論的枠組みは限られていました。

 

本研究では、 脳皮質、心拍、呼吸の相互作用を統合した数理モデルを構築し、身体振動が認知機能に与える影響をシミュレーションにより解析しました。視覚認知の指標として両眼視野闘争*1を用い、脳の揺らぎ(脳変動性)や心拍変動と関連づけて検討した結果、振動の周波数によって認知状態や生理反応が大きく変化することを示しました。

本成果は、振動が脳と循環・呼吸系の同期を通じて認知機能に影響する可能性を示しています。将来、快適性や集中力を高める移動空間やヒューマンインタフェース設計への応用が期待されます。

 

*1 両眼視野闘争:左右の目でそれぞれ異なる画像を見た場合、どちらか一方が知覚され、時間の経過とともに左右の知覚が切り替わる現象。
 

タイトル: Effects of External Body Vibrations on Cognitive Performance Through Brain–cardio–respiratory Dynamics
著者: Iwamoto, M., Kanazawa, H., Narita, A., Yonekura, S., Kuniyoshi, Y.
掲載誌: Scientific Reports
掲載日: 2025年10月28日
https://doi.org/10.1038/s41598-025-21639-6