当社の吉宗航らが行った研究が Journal of Power Sources に掲載されました。
燃料電池車は走行時に水しか排出しない一方、低温条件下では走行中に生じた水が電極内部に留まると、停車後に凍結することにより再始動性に影響を及ぼし得る場合があります。そのため、一般に燃料電池車では停車時にガスを流して内部の水を除去する「パージ」と呼ばれる制御が採用されており、低温条件における再始動性を向上させています。パージの完了には、一例としてプロトン交換膜の電気抵抗値を指標とする方法が用いられてきました。この方法は実用上有効な間接指標であり、電極内部の水分布や多孔質のガス拡散層に残る水の推定に基づくものです。このような評価における妥当性をより確かなものにする基礎的知見として、ガス拡散層内部の残留水を直接可視化する研究が求められてきました。
本研究では、シンクロトロン放射光X線を用いて、パージ工程中の燃料電池電極内部の水の蒸発挙動をその場で観察しました。その結果、電極の「リブ下」と呼ばれる部分に水がたまりやすく、ガスを流しても蒸発しにくいことを初めて明確にしました。また、流路に残った水の塊が、水蒸気の移動を妨げていることも分かりました。これらの知見は、停車時にどのようにガスを流せば水を効率よく除去できるかを考える重要な手がかりになります。将来、寒冷地でもさらに安心して効率よく使える燃料電池車の実現に貢献することが期待されます。
タイトル: In Situ Observation of Water Evaporation in Gas Diffusion Layers of Polymer Electrolyte Fuel Cells
著者: Yoshimune, W., Kato, A., Hayakawa, T., Yamaguchi, S., Kato, S.
掲載誌: Journal of Power Sources
掲載日: 2025年11月1日
https://doi.org/10.1016/j.jpowsour.2025.237896