当社の代永彩夏らが行った研究成果が、Small Methods に掲載されました。
電気自動車の普及に伴い、リチウムイオン電池には高エネルギー密度化と製造時の環境負荷低減の両立が求められています。しかし、エネルギー密度を高めるため電極の厚膜化を進めると、電池内部でのリチウムイオン輸送が阻害され、出力性能が低下するという課題がありました。特に、電子伝導性を確保するためにこれまで用いられてきた粒子状の導電助剤は、電極内の細孔を塞ぐことでイオン輸送を妨げる要因となっていました。さらに、従来の電極製造プロセスでは溶媒を使用するため、溶媒の乾燥・回収工程に多くのエネルギーを要し、環境負荷増の要因となっていました。
本研究では、粒子状導電助剤の代わりに炭素繊維を用い、溶媒を使用しない「静電場による粉体成膜法」によって、炭素繊維を電極厚み方向へ配向させる技術を開発しました。この技術により、炭素繊維を長距離の電子伝導経路として活用し、電子伝導性を高めながら、イオン輸送を大きく損なわない電極構造を実現しました。その結果、従来電極と比較して電子抵抗を100分の1以下に低減するとともに、高出力条件下でも高い放電容量を維持できることを実証しました。本技術は、高性能なリチウムイオン電池と低環境負荷の製造プロセスを両立する、新たな電極設計・製造技術として活用されることが期待されます。
タイトル: Electrostatic Dry Coating Strategies for Through-Plane Control of Electronic Pathways in Lithium-Ion Electrodes
著者: Yonaga, A., Matsunaga, T.
掲載誌: Small Methods
掲載日: 2026年4月1日