当社の牧野総一郎らが行った研究成果が、 Journal of Colloid and Interface Science に掲載されました。
電気自動車の普及に伴い、高品質なリチウムイオン電池を大量生産する技術の重要性が高まっています。その中で、電極材料を分散媒中に分散した電極スラリーの状態は、塗工品質や電池性能を大きく左右します。従来、スラリーを均一化するために高濃度条件で強く混練する工程が用いられてきましたが、水系負極スラリーでは不可逆的な粘度低下が生じるなどの課題がありました。
本研究では、スラリー中に約1%しか含まれない分散剤カルボキシメチルセルロース(CMC)に着目しました。高濃度条件で強く混練すると、CMCの分子鎖が短くなり、これに伴ってスラリーの粘度と弾性が大きく低下することを見出しました。その結果、黒鉛粒子の分散安定性が損なわれ、沈降や凝集が進むことで、塗工ムラや欠陥が増加することを確認しました。さらに、液相粘度の低下は乾燥過程における結着材の偏在を促し、完成電極の電子抵抗を増加させることを明らかにしました。加えて、混練の回転数と時間を整理することで、混練の強さを総変形量に基づいて評価する指標として、蓄積最大せん断ひずみを提案しました。
本研究の知見は、電極スラリーの混練工程において、分散効率と分散剤の安定性を両立させるための混練条件の最適化や、より高品質な電池製造プロセスの設計に役立つことが期待されます。
タイトル: High-Solid-Content Kneading Degrades Carboxymethyl Cellulose as a Dispersant and Destabilises Graphite Anode Slurries
著者: Makino, S., Ishii, M., Kawauchi, S., Sasaki, M., Akimoto, Y., Nakamura, H.
掲載誌: Journal of Colloid and Interface Science
掲載日: 2025年12月1日