当社の吉宗航が執筆したPerspective(展望論文)が、 Cell Reports Physical Science に掲載されました。

 

固体高分子形燃料電池では、生成物である水の扱いが性能や寿命を大きく左右します。水は発電に必要な一方で、過剰な水が電極内部の細孔に蓄積し、酸素の通り道を塞ぐと、発電効率の低下を招きます。これまでの研究では、燃料電池内部に蓄積した水をいかに排出するかが主な関心事でしたが、近年、水は「除去する対象」ではなく、「積極的に設計すべき材料の一部」として捉える考え方が広がりつつあります。本論文では、X線や中性子線を使った先端計測技術により、燃料電池内部の水の振る舞いを、ミクロから原子レベルまで多角的に整理しました。そして、水を「設計パラメータ」として活用し、触媒表面近傍の水分子の配置を制御することで性能向上を目指す設計指針を示しました。

 

他方で、こうした水の挙動を実際の発電環境下で直接観察することは容易ではなく、特に触媒表面での水分子や反応中間体の識別や、その場での挙動の追跡には、既存のX線・中性子線計測技術では限界があります。そこで本論文では、燃料電池内部の水をより詳細に理解するために、量子ビーム計測技術のさらなる発展が重要となると結論付けました。次世代の量子ビーム計測技術によるマルチスケールな水の理解が、性能と耐久性を両立する次世代燃料電池の実現につながると期待されます。

 

タイトル:Reframing Water as a Tunable Design Parameter in Polymer Electrolyte Fuel Cells by Exploring Multiscale Perspectives

著者: Yoshimune, W.

掲載誌: Cell Reports Physical Science

掲載日: 2026年3月18日

https://doi.org/10.1016/j.xcrp.2026.103146