当社の宇山健らが行った研究成果が、Inorganic Chemistry に掲載されました。

 

 リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を正極活物質として用いたリチウムイオン電池は、資源量豊富なFeを主成分とするため、近年その利用が拡大しています。 LiFePO4は、充放電反応中にLi量の異なる2つの相へと変化し、その過程で結晶軸の方向によって格子変化が異なる異方性や、充電時と放電時で変化の仕方が異なる非対称性が現れることが知られています。しかし、こうした相転移の挙動を統一的かつ定量的に評価する手法は確立されていませんでした。

 

そこで、本研究では、 LiFePO4の各相について、充電と放電時の格子定数の差を表すδパラメータを導入しました。更に、 X線回折/X線吸収分光同時測定によって定量的に評価することで、 LiFePO4の相転移挙動を新たな視点から再考察しました。その結果、充放電速度を上げると、2相の内の一方のみに約0.1%というごくわずかな格子歪が生じることを明らかにしました。この歪は、異方性と非対称性を示し、相転移を起こりやすくし、その結果 LiFePO4の高速充放電特性に寄与している可能性があります。本成果は、 LiFePO4だけでなく他の電池材料の相転移挙動を評価する新たな手法として、高速充放電特性に優れた蓄電池材料の設計への貢献が期待されます。

 

 

タイトル: Rate-Dependent Anisotropic Lattice Strain in LiFePO4 Verified by Simultaneous Operando X‑ray Diffraction and Absorption Measurements

著者: Uyama, T., Nonaka, T., Mukai, K.

掲載誌: Inorganic Chemistry

掲載日: 2026年5月15日

https://doi.org/10.1021/acs.inorgchem.6c00718