当社の舟山 啓太らが京都大学と共同で行った研究成果が、 Communications Physics に掲載されました。

 

電子機器の高性能化を支えるうえで、デバイス内部に生じる熱を適切に逃がし、温度を制御することは重要な課題です。半導体デバイスの高集積化や量子技術の発展に伴い、熱を扱う領域はますます微細になっています。こうしたなか、材料の性質だけでなく、構造のつながり方によって熱の広がり方や冷める速さを制御する「トポロジカル熱拡散」が注目されています。

 

しかし、微細構造では、従来の熱拡散に加え、熱を運ぶフォノン(結晶中の原子振動を量子的に記述したもの)の波動的な性質が熱輸送に影響し、構造表面での反射や散乱が生じます。そのため、熱の流れやすさを表す熱伝導率が構造サイズによって変化し、熱伝導率を一定とする従来のモデルでは、微細構造の熱輸送を捉えきれず、熱設計が困難になる一方で、構造サイズの影響を考慮した熱輸送モデルは十分に検証されていませんでした。

 

本研究では、この課題に対し、微細構造における熱輸送をトポロジカル熱拡散の枠組みで説明できるかを検証しました。まず、直径数マイクロメートルの円盤状シリコン構造を細いビーム(梁)で接続し、長いビームと短いビームを交互に配置した一次元構造を作製しました。この円盤部に熱を加え、細いビームを介したフォノン輸送によって温度が低下する様子から熱減衰率を求めました。さらに、ビームのサイズに応じて変化する有効熱伝導率を取り入れたトポロジカル熱輸送モデルを構築し、長短ビームの配置が熱輸送に与える影響を考慮して理論的な熱減衰率を計算しました。その結果、実験で得られた熱減衰率と理論計算はよく一致しました。このことは、提案したモデルが微細構造における熱輸送を適切に記述できることを示しており、構造のトポロジカル的特性に基づいて熱減衰率の予測できることを明らかにしました。

 

この成果は、フォノンの振る舞いに対する構造サイズの影響が無視できない微細構造にも、トポロジカル構造を利用した熱輸送設計の適用範囲を広げるための指針となるものです。将来は、微細な半導体デバイスや量子デバイスにおいて、熱が集中する場所や温度変化の速さを考慮した熱マネジメント設計への活用が期待されます。

 

 

タイトル: Design of Topological Thermal Diffusion in the Quasi Ballistic Phonon Regime

著者: Funayama, K., Akura, Y., Tanaka, H., Hirotani, J

掲載誌: Communications Physics

掲載日: 2026年7月18日

https://doi.org/10.1038/s42005-026-02763-9