当社の吉野 修平らが行った研究成果が、ACS Applied Materials & Interfaces に掲載されました。
脱炭素社会の実現に向け、水素を利用する燃料電池への期待が高まっています。なかでも固体高分子形燃料電池は、比較的低い温度で作動し、高い出力を得やすいことから、自動車や商用車への応用が期待されています。一方、電極には貴金属である白金が用いられており、その使用量を抑えながら性能を十分に引き出せる、生産性にも優れた電極製造技術が求められています。
燃料電池の電極は、白金微粒子を担持した炭素粒子である「触媒粒子」、プロトンを運ぶ高分子材料「アイオノマー」、溶媒からなる触媒インクを塗布・乾燥して作製します。アイオノマーは触媒粒子の表面に吸着し、その吸着量は、インク中での触媒粒子の集まり方や乾燥後の触媒層構造(空隙構造やプロトンの移動経路)に影響するため、アイオノマーの吸着挙動を理解し、制御することが重要です。しかし、その吸着量は、炭素粒子の表面の特徴、粒子の凝集状態、白金担持量など複数の要因に左右されます。同程度の表面積を持つ炭素粒子でも吸着量が異なることがあり、各要因の影響を切り分けて評価することが課題でした。
本研究では、炭素粒子の表面積、凝集状態、表面の化学的な特徴、白金担持量とアイオノマー吸着量との関係を系統的に調べ、その結果を統一的に表すモデルを構築しました。さらに、これらの特性が異なる24種類の触媒粒子について、モデルによる計算と実測値とを比較したところ、両者はよく一致しました。これにより、複数の材料特性が吸着量に及ぼす影響を定量的に比較できることを示しました。
今回得られた知見は、触媒インク中における材料間相互作用の理解を深め、触媒インクや触媒層の材料設計に向けた基礎的な指針になると期待されます。
タイトル: Structural Factors of Platinum-Supported Carbon Influencing Ionomer Adsorption in Fuel Cell Catalyst Inks
著者: Yoshino, S., Harada, M., Hasegawa, N., Yomo, S., Koiwai, A., Minami, S., Yamakawa, S., Jinnouchi, R.
掲載誌: ACS Applied Materials & Interfaces
掲載日: 2026年1月28日