当社の小山志穂里らが東京大学・名古屋工業大学と共同で行った研究成果が、Chaos に掲載されました。

 

気候変動への対応や災害対策のためには、気温や気圧などの気象データを正確に把握することが重要です。しかし、観測機器の設置にはコストや地形などの制約があり、十分な観測データを得られない地域も少なくありません。従来の気象予測では、その多くが大量のデータや大規模な計算資源を用いた高精度予測に注力してきました。一方、限られた観測データや計算資源しか利用できない場合についての検討は十分でなく、特にどのような場合に所望の精度の予測が可能なのかを評価する方法はほとんど整理されていませんでした。

 

本研究では、軽量な機械学習モデル「リザバーコンピューティング」の一種であるEcho State Networkを用いて、離れた地点の観測データから気温や気圧を予測できる範囲を調べました。東京、ニューヨーク、ロンドン、カイロ、キャンベラといった異なる気候帯に位置する複数都市で解析を行った結果、各地域で予測可能な範囲を定量的に評価できることを示しました。例えば東京周辺では、気温については方向によっておよそ200~600km、気圧についてはおよそ200~400km離れた地点の観測データからでも有効な予測が可能であることが分かりました。さらに、過去の観測データの相関を調べることで、どの程度の範囲まで予測可能かをあらかじめ見積もれることを明らかにしました。これにより、実際に予測モデルを構築する前の段階で、どの程度の精度が期待できるのかを評価できる可能性が示されました。

 

この成果は、限られた観測網でも効率的に気象情報を活用する手法の開発につながります。将来的には、気象予測だけでなく、大気汚染など他の環境データの推定や監視への応用が期待されます。

 

タイトル:Assessing the Predictability of Meteorological Variables via Spatial Correlations Using Echo State Networks

著者: Koyama, S., Inoue, D., Yoshida, H., Aihara, K., Tanaka, G.

掲載誌: Chaos

掲載日: 2026年8月7日

https://doi.org/10.1063/5.0324305