電子ジャーナル 技報R&Dレビュー

要旨集●Vol.37 No.1(2002年3月発行)
 研究報告
p.44

各務 学,山下達弥, 河崎朱里

 車載通信等において高速性,低コスト,軽量性を同時に満足するためには光波長多重通信が有望と考えられる。我々は低コストの光通信モジュールを独自開発の自己形成光導波路技術により実現した。本技術は光硬化性樹脂の混合液中での高屈折率成分のみの選択重合と,光ファイバ出射光によって誘起される屈折率上昇による自己集束効果を利用している。すなわち,屈折率および硬化波長の異なる2種類の光硬化性樹脂 ( それぞれl1, l2とすると,l1> l2の関係 ) からなる混合液中に光ファイバを挿入し,波長l1の光を照射することで光ファイバ先端から均一直径の固形光導波路を成長させることが可能となる。自己形成により光ファイバの位置決め工程やパッケージ工程が省略されるため安価な光通信モジュールの作製が期待できる。特に,光波長多重通信用の3次元光モジュール形成に必要となる2種類の光要素部品 ( 波長選択フィルタ通過後の導波路の再成長,および45ミラー表面での90反射成長 ) の実現を確認した。最後に,これらの要素技術を利用した双方向通信モジュールおよび波長多重モジュールについて提案する。

 

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P.51

長井康貴,新庄博文, 横田幸治

A highly selective oxidation performance, which has a higher oxidation activity for hydrocarbons than that for SO2, is required for diesel oxidation catalysts. We examined the oxidation reaction of n-C6H14 and SO2 over two types of Pt/ZrO2 catalysts with low (8 m2/g) and high (75 m2/g) surface areas of the ZrO2 supports (referred to as ZrO2-8 and ZrO2-75, respectively). The Pt/ZrO2-75 exhibited a desirably higher selectivity for the complete oxidation of n-C6H14 than that of SO2, as compared with the Pt/ZrO2-8. In order to clarify the cause of this selective oxidation, we investigated the Arrhenius parameter for these oxidation reactions and characterized these catalysts using XPS, XRD, TEM, IR and CO2-TPD methods. The amount of Pt0 (metal) in the Pt/ZrO2-75 was significantly lower than that in Pt/ZrO2-8, because the high basicity of the ZrO2-75 support stabilized the high oxidation state of Pt such as Pt2+ and Pt4+. It was concluded that the difference in the number of Pt0 sites as catalytic active sites causes the apparent selectivity to change due to the much slower reaction rate for the SO2 oxidation than that for the n-C6H14 oxidation.


 ディーゼルエンジン用の酸化浄化触媒には,排ガス中の炭化水素は酸化し,SO2は酸化しない選択的酸化能が要求される。本研究では,ZrO2担体の比表面積が異なる ( 8 m2/gおよび75 m2/g,これらをZrO2-8およびZrO2-75と記す ) 2種のPt/ZrO2触媒によるn-C6H14およびSO2の酸化反応を調べた。Pt/ZrO2-75触媒はSO2よりn-C6H14を選択的に酸化し,Pt/ZrO2-8触媒に比べて望ましい選択性を示した。この選択性の原因を明らかにするために,これら酸化反応のアレニウスパラメータを求め,また,XPS,XRD,TEM,IRおよびCO2-TPD 解析により触媒のキャラクタリゼーションを行った。ZrO2-75の高い塩基性によってPtがPt2+およびPt4+の高酸化状態に保たれるため,Pt/ZrO2-75中のPt0 ( メタル ) サイトの数がPt/ZrO2-8に比べて著しく減少することがわかった。SO2酸化反応の速度がn-C6H14に比べて非常に遅いために,触媒活性点として働くPt0サイト数の差によって,見かけ上の選択性が変化すると結論された。

 

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P.59

畑中達也

 直接メタノール型燃料電池 (DMFC) は,液体燃料を改質器レスで用いる最もシンプルな燃料電池の一つとして注目されている。その用途としては,車両用動力源から携帯機器用二次電池代替電源に至るまで幅広く検討されている。

ここでは,その重要な技術課題とされてきた燃料極触媒とメタノール透過抑制電解質膜に対して,参照極を用いた解析によってそれらの寄与度の定量化を行った実験結果,および,高い電気伝導性とメタノール透過抑制効果を合せ持つ,当社で合成したグラフト膜を電解質膜に適用した実験結果を紹介する。さらに,最近特に注目を浴びている二次電池代替電源としての常温作動特性の評価結果を紹介する。

当社で行ったこれらの実験結果をもとに,将来のDMFCの可能性を議論し,解決すべき課題を提示する。

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