47巻1号 (2016.3)
特集
触媒機能構築の新たなアプローチ
Part Ⅰ.特集
特集概要
論文
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pages 1-13
鈴木賢一郎
鋳型剤を用いた自己組織化法により合成したフェリハイドライト(Fh)多孔体は、大気中オゾンに対し、従来の酸化鉄系材料に比べて優れた吸着・触媒能を有した。浄化能発現の要因がFh骨格中の酸素不飽和となる3配位4配位のFeに由来することを明らかにした。
【日本語関連論文】
・鈴木賢一郎, 長井康貴, "メソポーラスフェリハイドライトの合成と大気浄化への応用", セラミックス, Vol. 49, No. 6 (2014), pp. 473-477. -
pages 15-21
加藤悟、尾関弘修、山田博史、田川智彦、高橋直樹、新庄博文
触媒性能の上限は、自動車触媒の内部におけるガスの拡散挙動に影響される場合があるため、触媒開発にはガス拡散挙動に対する理解が必須である。本文では、これまで開発した測定手法および装置について紹介し、実測データから見えてきたガス拡散挙動について報告する。
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4. Electrochemical Automotive Exhaust Purification
電気化学的手法による排気浄化触媒(2,654kB)
pages 23-33
坂本淑幸
次世代の排気浄化システムの一つとして期待される電気化学的手法による排気浄化法は、電解質を電極で挟み込み電極間に電圧を印加することで作動する。これまでの取り組みを紹介しながら、そのメカニズムと可能性について述べる。
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pages 35-43
伊藤由彦
非平衡プラズマとその生成物であるオゾンのディーゼルエンジン排ガス後処理への適用可能性を検討するため、オゾンによる粒子状物質(PM)の酸化を評価した結果、低温PM酸化が可能となり、プラズマアシスト触媒(PAC)によるNOx浄化と併せて、非平衡プラズマの有用性が明らかとなった。
【日本語関連論文】
・内藤一哉 他, "革新的次世代低公害車総合技術開発 ― 多孔質電極を用いた低温プラズマPM除去システムの開発 ― ", 自動車技術会学術講演会前刷集, No.87-07 (2007), pp. 1-4.
・姚水良 他, "革新的次世代低公害車総合技術開発 ― O3とNO2によるPM酸化促進に関する基礎研究 ― ", 自動車技術会学術講演会前刷集, No. 87-07 (2007), pp. 5-10.
Part II.
スペシャルレビュー
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6. Nylon 6-clay Hybrid: From Invention to Practical Use
ナイロン6クレイハイブリッド ― 発明から実用化まで ―(840kB)
pages 45-55
臼杵有光
豊田中央研究所で開発したナイロン6クレイハイブリッド(NCH)について、その基礎研究から自動車用材料として実用化に至るまでの経緯を述べた。研究のステージを5段階に分けて、各ステージでの研究内容とマネージメントについて振り返った。
論文
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pages 57-66
脇稔、前川佳史、溝下倫大、谷孝夫、稲垣伸二
ジビニルピリジン、フェニルピリジン、ビピリジンを架橋有機基とした新規結晶状メソポーラス有機シリカを合成した。骨格中の架橋ピリジン部位は配位子として機能し、高機能性金属錯体を細孔内に形成できた。これを用いて不均一系触媒や光触媒系構築に応用した。
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8. Topology Optimization Method with Vector Field Design Variables
ベクトル場を対象としたトポロジー最適化(3,312kB)
pages 67-75
野村壮史、Ercan M. Dede、松森唯益、川本敦史
構造物の形態と、構造物を構成する異方性材料の配向角分布を同時に設計するトポロジー最適化手法を紹介する。数値例として単一荷重と複数荷重の剛性最大化問題を用いて、提案手法の特徴である同時最適化の特徴を解析する。
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pages 77-85
荻原信宏
蓄電デバイスの電池性能と安全性の両立に向けて、Li基準で0.5~1.0 Vで可逆に酸化還元反応する層状構造を有する金属有機構造体インターカレーション負極材料を開発した。充放電時に、この層構造は維持され、その際の体積変化はわずか0.33%と小さい。