48巻4号 (2017.12)
特集
低炭素社会を目指した内燃機関の挑戦
Part Ⅰ.特集
特集概要
論文
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pages 1-10
小坂英雅、脇坂佳史、野村佳洋、堀田義博、小池誠、中北清己、川口暁生
内燃機関の熱損失低減および従来遮熱手法の欠点を克服するため、吸気行程の燃焼室壁温を上げない「壁温スイング」遮熱法を提案した。その概要と必要な遮熱膜特性、燃費向上効果を数値計算により検討する。併せて、提案した構造の遮熱膜を単気筒エンジン部品に形成し、熱流束の低減効果を明らかにする。
【日本語関連論文】
・小坂英雅 他, "壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減 : 数値計算による適切な遮熱膜特性の検討", 自動車技術会論文集,Vol. 44, No. 1 (2013), pp. 39-44.
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pages 11-17
堀江俊男、清水富美男、西川直樹
アルミニウム多孔質陽極酸化膜の遮熱スイング膜への適用を検討した。適用のためには、高い空隙率と燃焼室内での使用に耐える強度が必要である。通常の陽極酸化膜では十分な強度を得られなかったが、シリカにより膜を強化することにより、高空隙率と強度との両立が可能となった。
【日本語関連論文】
・西川直樹 他, "壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減 : スイング遮熱膜の材料", 自動車技術会論文集,Vol. 47, No. 1 (2016), pp. 55-60.
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pages 19-30
脇坂佳史、稲吉三七二、福井健二、小坂英雅、堀田義博、川口暁生、猪熊洋希、山下英男、高田倫行、山下親典
燃焼室壁の表面温度をガス温度に追従させて熱損失を低減する「壁温スイング遮熱法」を実現するために、熱を伝え難く、熱し易く冷めやすい熱物性を持つ遮熱膜を開発した。本技術を遮熱ピストンに適用し、冷却損失が低減し、排気と性能を悪化させることなく熱効率が増加する効果を実機で検証した。
【日本語関連論文】
・脇坂佳史 他, "壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減 : 単筒エンジンによる遮熱効果の先行検討", 自動車技術会論文集,Vol. 47, No. 1 (2016), pp. 39-45.
・川口暁生 他, "壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減 : 列型過給直噴ディーゼルエンジンへの適用", 自動車技術会論文集,Vol. 47, No. 1 (2016), pp. 47-53.
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pages 31-41
福井健二、脇坂佳史、西川一明、服部義昭、小坂英雅、川口暁生
壁温スイング現象の実証のため、レーザ誘起燐光法を用いた高応答温度計測技術を構築した。本計測法を可視化エンジンに適用した結果、ピストン表面の遮熱膜の表面温度がサイクル内で140Kスイングすることを確認し、非遮熱膜の45Kと明確な違いを捉えた。
【日本語関連論文】
・福井健二 他, "レーザ誘起燐光法を用いた高応答温度計測技術 : 壁温スイング遮熱膜への応用", 自動車技術会論文集,Vol. 47, No. 1 (2016), pp. 61-66.
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pages 43-53
山本征治、政所良行、長野進、渥美欣也、渡邉信
藻類の一種であるボトリオコッカスから抽出した非酸素含有重質オイルを、工場などの排熱が利用できる温和な条件で自動車用燃料に改質することを試みた。高い収率で軽油性状に近い改質油を得たが、ドロップイン燃料としての利用には課題があった。
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pages 55-64
石田亘広、神谷典穂、荻野千秋、大西徹
バイオマスからの効率的なエタノール生産を目指し、イオン液体を用いた新しい統合プロセスを確立した。イオン液体で前処理した実バイオマスから、糖化酵素を生産する遺伝子組み換え酵母によって、エタノールが生産できることを実証した。
【日本語関連論文】
・独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構, "イオン液体を利用したバイオマスからのバイオ燃料生産技術の開発", 平成21~24年度成果報告書 新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発 (先導技術開発) (2013).
Part II.
スペシャルレビュー
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8. Human Characteristics Models for Automobile Design
自動車設計のための人間特性モデル (2288kB)pages 65-85
脇田敏裕
人間特性を踏まえた安全で快適な自動車を効率的かつ効果的に設計するためには、人間特性モデリングが重要な技術となる。モデルには物理モデルと統計モデルとの2種類があり、それぞれに利害得失がある。本レビューでは4つの研究例を紹介し、モデリングに関して議論する。
【日本語関連論文】
・脇田敏裕, "自動車の音色評価", 豊田中央研究所R&Dレビュー, Vol. 27, No. 3 (1992), pp. 23-32.
・脇田敏裕 他, "運転中情報機器操作性の評価法", 情報処理学会論文誌, Vol. 42, No. 7 (2001), pp. 1762-1769.
・内山祐司 他, "居眠り反応遅れと視床・脳幹における脳活動の関係", 自動車技術会学術講演前刷集, No. 121-11 (2011), pp. 19-22.
・脇田敏裕 他, "運転行動を用いたドライバ識別", 自動車技術会学術講演会前刷集, No. 119-05 (2005), pp. 17-20.