電子ジャーナル 技報R&Dレビュー

要旨集●Vol.37 No.1(2002年3月発行)
 特集:ファーストオーダーアナリシス
 Review
P.1

小島芳生

 車両開発におけるCAEの役割は,評価段階における試作の代替としての数値実験的なものから,企画・設計段階を含んだ開発プロセス全体を支えるものとして議論され始めている。本稿では,最近,具体化が始まった企画・設計段階のCAEの在り方を概況しつつ,その一例としてのFirst Order Analysis (FOA)を紹介する。

 

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 Research Report
P.4

西垣英一

本報では,詳細CAEを補完する技術として,ボデー設計者自らが概念設計段階で容易に利用できる新しいCAEであるFirst Order Analysis (FOA) を提唱する。

このFOAの基本概念は,(1) 手軽で容易に扱える,Microsoft/Excelをフロント・エンドとするグラフィカルなユーザ・インターフェース,(2) 想定する設計の妥当性を簡便に検討するのが目的のため,材料力学的な基礎知識で十分理解できる手法,(3) 新規構造のヒントや補強部材配置に示唆を与える,梁要素を用いたトポロジー最適化機能,の主に3項目から構成されている。

まず,FOAを構成し,Microsoft/Excelをインターフェースとして動作する解析ツールについて述べる。

次に,車両設計の概念設計への適用可能性を示すため,FOAの概念に基づくプログラムのひな形を示し,その有効性を示す。

さらに,有限要素モデルのメッシュデータから,FOAで用いる断面形状を作成する機能を紹介し,力やモーメント分布のみならず,降伏関数値や断面応力分布などが容易に求められることを示す。

最後に,FOAから汎用CAEのマクロ言語を自動生成することで,FOAの容易な操作性を維持したまま,汎用CAEの解析機能が利用可能なことを示す。

 

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P.11

鶴見康昭,中川稔章, 森 信行

 FOA (First Order Analysis) は,初等力学理論に基づく比較的少ない自由度の梁要素やパネル要素による解析ツールと解釈される場合が多いが,広義には設計者に有益な情報を簡便に与える解析技術とも言える。一方,詳細CAE (Computer Aided Engineering) は専任の解析者が大規模FEMモデルを駆使して,精度の高い定量評価を行うツールである。このモデルの詳細化は計算精度の向上に貢献した反面,莫大な計算時間の必要性から開発現場における効率的な対策立案を困難にしている。そこで,詳細FEMモデルからその精度を保持しつつ簡略モデルを作成し,簡略モデルに基づき設計のための有益な情報を効率的に導出する解析技術が必要となる。これは,設計現場へ解析結果を迅速簡便に伝える意味で,FOAに包含される技術の一つと考える。本論文では,振動問題を対象に縮退技術を利用した簡便な計算方法を提案する。詳細モデルの中からあらかじめ複数の対策候補部位を選定し,縮退技術を利用して計算が容易な小規模モデルを作成する。次にそのモデルを利用して,局所部位の特性変更や構造変更が低減させたい振動特性に与える効果を短時間に予測する。

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P.17

西脇眞二

 Computer Aided Engineering (CAE) は,自動車産業に代表される機械産業において必要不可欠なものとなっている。そして,高精度化を目指したCAEの発展により,試作なしでも機械性能をある程度定量的に評価可能になりつつある。このような数値実験の代替手法としてのCAEを,そのまま実際の設計現場に持ち込むことはほぼ不可能に近い。近年,設計者自らが利用できる新たなCAEとして,First Order Analysis (FOA) が提案されている。本研究では,FOA開発の一環として,構造の理解が容易な梁要素とパネル要素を用いたトポロジー最適設計法を開発する。すなわち最初に,設計者の利用を前提とした最適設計の考え方をProduct Oriented Analysis (POA) の概念のもとに概説する。次に,相互エネルギの考え方に基づき,着力点と評価点の異なる場合の剛性である相互剛性の評価尺度を設定する。そして,その評価尺度を用いて,マルチローディングの考え方をもとに,梁要素の断面積を設計変数とした場合の最適設計問題を定式化する。さらに,その最適化問題を具体的に解く方法として,グランドストラクチャ法と逐次凸関数近似法を用いたトポロジー最適化アルゴリズムを構築する。最後に,簡単な数値例により,本手法の妥当性を検証する。

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P.25

杉浦豪軌,水谷義輝, 西垣英一

 トーションビーム式サスペンションは,FF車の後軸用として世界的な主流になっている。この方式のサスペンションでは,左右のトレーリングアームをつなぐトーションビームを,コーナリング時には剛に,段差乗り越し時には柔にするような設計の最適化が求められる。ここでは,設計者が簡便に扱える,本サスペンション用に開発したFOAソフトを紹介する。

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P.31
   
尼子龍幸
 

 CAEは,車両開発の分野において,開発期間の短縮や試作行程の削減に大いに貢献している。しかし,このような詳細CAEは専任者でなければ使用することは困難なため,開発の初期である概念設計段階に設計者が自らCAEを用いることは難しい状況にある。そこで,設計の初期段階で使用する新しいCAEとしてFirst Order Analysis (FOA) が提案されている。そのFOAにおける最適化計算手法の一つとして,剛性や重量等の目標値に対する形状寸法の最適値やその影響度を算出する寸法最適化に,応答曲面法を採用した。本論では,最初に近年数値解析の分野で注目の高い応答曲面法の概要を説明する。次に,2次元の簡単な数値例をもとに,開発したFOAの寸法最適化プログラムを解説するとともに,本手法の有効性を示す。

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