43巻4号 (2012.12)
特集
車両技術
Part Ⅰ.特集
特集概要
論 文
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pages 1-10
小野英一、服部義和、相澤博昭、加藤博章、田川真一、丹羽悟
本論文では、「所望の車体フォース&モーメントを得るという拘束条件下で各輪のμ利用率の上限を最小化する」車両運動制御則を導出した。さらに問題の凸性から導出された解が大域的な最適解であることを示した。これは、提案する統合制御が車体フォース&モーメントの理論限界を達成すること意味する。
【日本語関連論文】
・小野英一 他, "車両運動統合制御における理論限界の明確化と達成", 日本機械学会論文集(C編), Vol. 73, No. 729 (2007), pp. 1425-1432.
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pages 11-18
岩本正実、中平祐子
プリクラッシュ時の乗員の身構えや回避動作を模擬できる、筋の3次元形状を有するアクティブな人体有限要素モデルを開発した。開発したモデルは様々な衝突状況の下で、筋活動が乗員の挙動や傷害に及ぼす影響を詳細に調査できる唯一、かつ実用的なツールである。
【日本語関連論文】
・中平祐子 他, "全身筋FEソリッドモデルを用いた乗員胸部傷害解析", 自動車技術会論文集, Vol. 42, No. 6 (2011), pp. 1321-1326.
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pages 19-31
服部義和、小野英一、福井勝彦、村岸裕治
ドライバの感受特性に基づいて、車両の旋回・横運動において操縦性と安定性を高い次元で両立する目標車両運動を示す。さらに、与えられた目標車両運動を実現するアクティブ前後輪ステアの制御手法を提案する。
【日本語関連論文】
・服部義和 他, "人間の感受性を考慮した4輪アクティブステア制御",自動車技術会論文集,Vol. 39, No. 2 (2008), pp. 39-44.
・服部義和 他, "低速旋回時の目標車両運動 - ヨーレート・車体スリップ角に対するドライバの旋回感受特性に基づく考察", 自動車技術会2012春季大会前刷集,No. 37-12 (2012) pp. 1-6. -
5. Numerical Simulations of Aeroacoustic Fields around Automobiles
自動車まわりの空力音場の計算(1,492kB)
pages 33-45
加藤由博
自動車のAピラーやドアミラーまわりで発生する風切り音を数値計算により予測する手法を開発している。マッハ数による展開項のオーダーに基づいて、圧縮性流れ方程式から分離した支配方程式により音場を定義する。この音場方程式の離散化には、解の振動を抑えながらも精度の高いWENO法を採用し、有限体積法により計算する。自動車のAピラー・ドアミラーまわりに適用した結果、音場を直接可視化することが可能となり、音が発生して伝播する様子を示すことができた。
【日本語関連論文】
・加藤由博, 他, "自動車のドアミラーから発生する空力音の計算",日本機械学会論文集(B編), Vol. 72, No. 722 (2006), pp. 2402-2409.
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pages 47-57
杉浦豪軌、水谷義輝、松永継春、安藤陽星、柏木勇史
トリポード形等速ジョイントのスラスト力発生要因を解明するため、構成部品間の接触・摩擦力を模擬したマルチボディモデルにより、ローラ1軸分のみに注目して解析した。スラスト力の主要因は、ローラと溝の間の3種類のすべり速度による摩擦力であることが明らかになった。
左上図: Reprinted from J. Syst. Des. Dyn., Vol. 4, No. 6 (2010), pp. 857-870, c 2010 The Japan Society of Mechanical Engineers.
【日本語関連論文】
・杉浦豪軌 他, "トリポード形等速ジョイントのローラ挙動とスラスト力に関する研究", 日本機械学会論文集(C編), Vol. 76,No. 765 (2010), pp. 1308-1315. CiNiiへ(CiNiiは国立情報学研究所のサービスです)
・杉浦豪軌 他, "マルチボディモデルによるトリポード形等速ジョイントのスラスト力解析", 日本機械学会論文集(C編), Vol. 75 No. 753 (2009), pp. 1457-1464. CiNiiへ(CiNiiは国立情報学研究所のサービスです)
Part II.ハイライト論文
レビュー
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pages 59-67
加藤誠、李致漢
植物由来の樹脂モノマーとして、イソソルバイドに注目し、ポリウレタン、ポリカーボネートの合成、さらにポリカーボネートについてはクレイナノコンポジットの作製にも成功した。これらの材料は、剛性、耐熱性に優れ、新しい次代の樹脂としての可能性を示した。
【日本語関連論文】
・李致漢 他, "植物由来ポリカーボネートの合成と特性", 第19回ポリマー材料フォーラム予稿集 (2010), p. 161.
論 文
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8. Lattice Boltzmann Method for the Convection-diffusion Equation
移流-拡散方程式に対する格子ボルツマン法(1,001kB)
pages 69-79
吉田広顕、永岡真
移流-拡散方程式を数値的に解くための、多緩和時間法を用いた格子ボルツマンモデルについて概説する。非等方拡散過程を正しく解析可能であることを具体的問題への適用例を交えて示す。また、工学的応用のために提案した複雑形状境界上での反応を精度良く計算する手法についても述べる。
【日本語関連論文】
・吉田広顕 他, "移流-拡散方程式に対する多緩和時間モデルを用いた格子ボルツマン法", 日本機械学会計算力学講演会講演論文集, Vol.23 (2010), pp. 31-32. -
pages 81-92
吉住文太、吉田一徳、諸井隆宏、玉野真司、森西洋平
圧縮機用リード弁を対象に、リード-弁座間油膜の可視化とリード変形の計測を同時に行う装置を開発し、油膜に起因する開き遅れ現象を観察した。開弁前に油膜厚さの増加および油膜内キャビテーションの発生が確認され、開き遅れが小さい弁形状ではこれらが早期に実現することが分かった。
【日本語関連論文】
・吉住文太 他, "圧縮機の冷媒ガス吐出用リード弁における開き遅れ現象(開弁過程における油膜挙動の可視化と弁変形計測) ", 日本機械学会論文集(C編), Vol. 78 No. 795 (2012), pp. 3787-3802. -
pages 93-101
太田理一郎、郡司島造、島津智寛、大島久純、篠崎数馬、西川恒一、畑中達也、岡本篤人
垂直配向カーボンナノチューブの外壁修飾は、高性能な応用の実現には必須である。本論文では、垂直配向形態を維持可能な修飾手法として (1)貧溶媒添加ナフタレン晶析を利用した白金担持法、(2)紫外光照射前処理とアンモニア熱処理を用いた窒化法、について提案する。