既刊号
43巻2号 (2012.6)
特集
バイオテクノロジー
Part Ⅰ.特集
特集概要
論 文
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pages 1-7
石田亘広、戸高眠、守屋繁春
シロアリ(termite)は、腸内細菌由来のセルラーゼによって、バイオマスを高効率で分解することが知られている。セルロースからの糖化、ならびにエタノール生産を目指し、酵母(Saccharomyces cerevisiae)での分泌生産に適したシロアリ腸内細菌由来セルラーゼの同定を行った。
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pages 9-15
今村千絵
バイオリファイナリーやバイオ燃料生産において、低コストで効率的なバイオマス糖化技術が求められている。酵素進化技術SIMPLEX法の確立と本手法によるセルラーゼの高機能化(BGLへの耐酸性付与)について述べる。
【日本語関連論文】
・今村千絵 他, セルロース系バイオエタノール製造技術 (2010), pp.167-176, エヌ・ティー・エス.
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pages 17-24
嶋村隆、石田亘広、高旻天
乳酸発酵後の精製工程を簡略化するため、非中和条件下で行う抽出発酵と吸着発酵を開発した。吸着発酵では、活性炭を用いた吸着発酵、アセトンによる脱着、及び直接的な乳酸のオリゴマー化の一貫工程により、高光学純度のオリゴマーを生産することに成功した。
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5. Microbial Production of Isoprenoid Compounds
イソプレノイド化合物の微生物生産(1,602kB)
pages 25-33
徳弘健郎、村松正善、大音徳、小畑充生
イソプレノイド化合物は医薬品や再生可能なバイオ燃料の中間体として注目されている。我々は、ゲラニルゲラニオール(GGOH)の微生物による生産を試みた。代謝上キーとなる酵素遺伝子の過剰発現や、それらの融合遺伝子の発現により、3 g/L以上のGGOH生産に成功した。 -
pages 35-42
松山崇、山西守
遺伝子組換え微生物により物質を生産する際に、代謝制御は重要なため、代謝を動的に制御可能なCre-lox遺伝子スイッチを新たに開発した。この遺伝子スイッチを用い、ピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子と乳酸脱水素酵素遺伝子を制御する事により、エタノール発酵と乳酸発酵の切り替え、即ち"代謝変換制御"に成功した。
Part II.ハイライト論文
論 文
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7. Direct Synthesis of Organic Compounds from CO2, Water and Sunlight
太陽光を利用したCO2と水から有機物の直接合成(903kB)
pages 43-52
梶野勉、森川健志、佐藤俊介、荒井健男、鈴木登美子、上村恵子、山中健一、佐伯周、田中洋充
半導体と金属錯体を組合わせたハイブリッド型CO2還元光触媒を開発した。このCO2還元光触媒と水の酸化光触媒(酸化チタン)を用いた2室型の光リアクターを構築し、太陽光と水、CO2のみを原料にしたギ酸の直接合成を実証した。この際の太陽エネルギーの変換効率は0.04%であった。
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pages 53-61
稲森豊、山田信幸
車載ソフトウェアで発生の可能性がある割込み干渉(割り込み処理に起因するデータ競合)は、その未然防止対策が必須である。本論文では、割込み干渉の発生箇所を、誤検出数を抑制しながら漏れなく自動で検出する手法について述べる。
【日本語関連論文】
・稲森豊, 山田信幸, "静的コード解析による検出漏れのない割込み干渉検出手法の開発", 組込みシステムシンポジウム2010論文集 (情報処理学会シンポジウムシリーズ, Vol.2010, No.10) (2010), pp.113-118.
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pages 63-72
水谷守、山田有理、中村忠司、矢野一久
単分散球状メソポーラスシリカ(MMSS)の細孔を、種々の拡張剤を用いて形態や単分散性を保ったまま、ポストシンセシス法により最大5.5nmまで拡張した。さらに、その細孔内に強磁性物質であるFePtをナノ粒子として導入することに成功した。この複合体はメソ細孔性を持つと同時に強磁性的挙動を示した。
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pages 73-81
小坂英雅、野村佳洋、永岡真、稲垣昌英、久保田正人
ガソリンエンジンを対象にLES解析用燃焼モデルを開発した。従来、RANSモデルを拡張してLESに用いる場合が多いが、本研究では火炎のフラクタル特性を用いた新たな燃焼モデルを構築し、エンジン筒内計算に適用・検証した。さらにサイクル変動の解析も実施し、現象を良く再現できていることがわかった。
【日本語関連論文】
・小坂英雅 他, "LESによるガソリンエンジン筒内燃焼計算のための火炎伝播モデルの開発", 自動車技術会論文集, Vol.41, No.4 (2011), pp.827-832.