銅×ナノ構造による化学・機械作用の相補的ウイルス不活化技術
当社の重藤啓輔らが行った研究が MATERIALS TODAY BIO に掲載されました。
ドアノブなどの部材に付着したウイルスは、感染拡大の原因の1つです。そのため、部材に付着したウイルスの不活化を加速するコーティング材の開発は重要です。これまでに私たちは、銅に抗菌作用があること、セミの翅にある構造が細菌を物理的に破壊することに着想を得て、2つの効果を取り入れることで不活化の加速を期待し、ナノサイズの突起が高密度に並ぶ銅薄膜コーティングを提案しました(関連記事)。その結果、不活化を確認できたものの、性能向上に不可欠な不活化メカニズムは明らかになっていませんでした。
本研究では、大きな飛沫中のウイルスは湿潤環境が保たれる一方、エアロゾルなど小さな飛沫中では乾燥環境にさらされる点に着目し、この対照的な2つの環境それぞれについて、原子間力顕微鏡を用いてウィルスが分解される様子を観察しました。その結果、本材料は、環境に応じて相補的な2つの作用を発揮することが明らかになりました。具体的には、湿潤環境では従来知られていた通り、銅イオンによる”化学作用”が働き、一方、乾燥環境ではナノサイズの突起がウイルスを物理的に破壊する”機械作用”が主に働くことを初めて実験的に明らかにしました。
今後、本技術はウイルス対策をはじめとする公衆衛生の向上に貢献すると期待されます。
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Shigetoh, K., Hirao, R., Ishida, N. ACS Applied Materials & Interfaces. 2023, vol.15, 16, pp.20398–20409
タイトル: Destruction of virus particles via mechanical and chemical virucidal activity of nanocolumnar copper thin films
著者: Shigetoh, K., Hirata, Y., Muramoto, N., Ishida, N.
掲載誌: MATERIALS TODAY BIO
掲載日: 2025年4月30日
https://doi.org/10.1016/j.mtbio.2025.101803