水中超音波で電極を分離する電池リサイクル技術
当社の山田由香らが行った研究が WASTE MANAGEMENT に掲載されました。
近年、自動車の電動化によりリチウムイオン電池の使用量が急増しています。その結果、使用済み電池だけでなく、製造工程で発生する未使用の電極端材も増加しており、リサイクル方法の確立が急務となっています。とくに、電極材料を効率よく回収することは、環境保護と資源の有効利用の観点から重要です。
従来は、高温処理や化学薬品で材料を分離し、不純物を除去して資源回収してきましたが、この方法はCO2排出量と環境負荷が大きい場合があります。そこで近年は、材料をできるだけそのまま分離・精製し、再利用する「ダイレクトリサイクル」の確立が注目されています。特に、異なる素材が貼り合わされた電極をきれいに分けることは大きな技術的課題でした。
本研究では「超音波」を利用し、水中で電極材料を効率的に剥がす新しいリサイクル手法を提案しました。電極端材を対象とし、水中に沈めて超音波を照射することで、リチウムイオンの出入りを担う活物質と、電気の通り道となる金属箔を短時間で分離できることを示しました。薬品や高温処理を使わないため環境に優しく、リサイクル効率も向上します。
この技術は、持続可能な社会の実現に向けて、電極材料の循環利用と電池リサイクルに貢献することが期待されます。
タイトル: Ultrasonic separation of electrode scrap in water: a sustainable method for Li-ion battery recycling
著者: Yamada, Y., Kondo, Y., Kondo, H.
掲載誌: WASTE MANAGEMENT
掲載日: 2025年6月21日
https://doi.org/10.1016/j.wasman.2025.114969