溶解度を用いた材料設計技術で複合材料の強度を向上
当社の稲垣友美らが行った研究が ACS Applied Materials & Interfaces に掲載されました。
車載パワーデバイスに用いられる放熱板には、高い熱伝導率だけでなく、組付け時の応力に耐えられる曲げ強度が必要です。高い熱伝導率を持つ窒化ホウ素(BN)を樹脂に添加した複合材料は高い放熱性能を示すことが知られていましたが、BNと樹脂の接合強度が弱いため曲げ強度が弱くなるという課題がありました。
本研究では、物質同士の親和性の予測に用いられるハンセン溶解度パラメータ(HSP)を用いて、BNとポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の親和性を高めた複合材料を設計・開発しました。HSPの予測に基づき、BNの表面官能基との親和性が高いニトリル基をPMMAに導入して複合材料を作製したところ、高い放熱性を維持しつつ曲げ強度を高めることに成功しました。分析の結果、相手材の表面官能基との親和性が高い官能基が優先して出現する「濃化効果」により、PMMA表面にニトリル基が濃縮したことでBNとの接着性が向上し、曲げ強度が増したことが示されました。HSPを材料設計に応用する本技術は、高性能な複合材料の実現につながることが期待されます。
タイトル: Enhancement of Mechanical Properties of High-thermal-conductivity Composites Comprising Boron Nitride and Poly(methyl methacrylate) Resin through Material Design Utilizing Hansen Solubility Parameters
著者: Inagaki, Y., Murase, M., Tanaka, H., Nakamura, D.
掲載誌: ACS Applied Materials & Interfaces
掲載日: 2024年5月9日
https://doi.org/10.1021/acsami.4c00626