乱雑さを持つシステムに対して多様な制御則を設計する理論を構築
当社の伊藤優司らが京都大学と共同で行った研究が Automatica に掲載されました。
私たちの身の回りには、「乱雑さ」を伴うシステムが数多く存在します。ランダムな通信遅延を伴うロボットの遠隔制御システムを例に挙げると、「ロボットを目的地まで移動させる」といった目標を達成するためには、ランダムな遅延という乱雑さの特性を考慮しながら制御則を設計することが必要です。しかし、乱雑さを伴うシステムは数学的に取り扱いが困難なため、設計できる制御則は「平均的な遅延パターンが生じた場合によりスムーズに移動する」といった単純な目標を持つものに限られていました。
この問題に対して本研究では、乱雑さの特性に応じた様々な目的を達成するための制御則を設計する理論として「重み付き確率リッカチ方程式注」を構築しました。この理論を適用することで、乱雑さを平均化した単純な制御則だけでなく、「遅くてもいいから転倒しないように移動させる」、「転倒リスクを負ってでも速く移動させる」といった複雑な制御則を設計することが可能になります。本研究は、様々なシステムが持つ乱雑さの問題を解決する基礎理論として位置づけられ、今後さらなる発展と貢献が期待されます。
注)重み付き確率リッカチ方程式:制御則を設計するために長年用いられた従来のリッカチ方程式に対して、ある特殊な重み付き期待値を導入して乱雑さを扱った方程式であり、重みを適切に設計する事で様々な目的を達成するための制御則の設計を実現する。
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タイトル: Weighted Stochastic Riccati Equations for Generalization of Linear Optimal Control
著者: Ito, Y., Fujimoto, K., Tadokoro, Y.
掲載誌: Automatica
掲載日: 2024年9月17日
https://doi.org/10.1016/j.automatica.2024.111901