材料表面の広範囲にわたる微細構造と元素分布を定量的に解析するプロセス
当社の加藤光樹らが行った研究がScientific Reportsに掲載されました。
材料表面の微細構造や元素組成は、材料の性能に大きく影響するため、高性能な材料の開発には、材料の表面特性を理解することが不可欠です。微細構造の分析にはSEM(走査電子顕微鏡)、元素組成の分析にはEDS(エネルギー分散型X線分析)と呼ばれる手法が用いられます。一方で、従来は試料の一部分のみを対象とした少数の測定データを手作業で分析することが多く、網羅性と定量性に欠けるという課題がありました。
本研究ではSEMによる試料の広範囲における自動撮影とEDSを組み合わせることで得られる大量のデータを定量的に解析する新たなプロセスを開発しました。提案手法は、グリッド状に分割したSEM画像を特徴量に従ってクラスタリングし、それぞれのクラスターがどのような元素組成を持つかをEDSマップと照合させて突き止めます。このアプローチをリチウムイオン電池の電極材料に適用したところ、電池の劣化原因となる微細な構造変化や元素分布の特徴を従来の手動観察よりも明確に把握できることが実証されました。今回の応用例はリチウムイオン電池における有用性を実証するものですが、基盤となる解析技術は電子デバイス、セラミックス、触媒など、様々な材料の表面構造と組成の解析に活用できる可能性を持っており、多様な分野での材料設計や品質管理への貢献が期待されます。
タイトル: A Comprehensive and Quantitative SEM–EDS Analytical Process Applied to Lithium-ion Battery Electrodes
著者: Kato, T., Goto, K., Niwa, T., Shimizu, T., Fujii, A., Okumura, B., Oka, H., Kadoura, H.
掲載誌: Scientific Reports
掲載日: 2025年2月13日
https://doi.org/10.1038/s41598-025-89362-w