燃料電池の性能を左右する水素イオン伝導率の予測モデルを構築
当社の原田雅史らが総合科学研究機構(CROSS)および日本原子力研究開発機構と共同で行った研究が ACS Applied Materials & Interfaces に掲載されました。
燃料電池を構成する重要な要素である触媒層では、発電に必要となる水素イオンがアイオノマとよばれる高分子電解質中を伝導して触媒に提供されます。燃料電池の発電性能を向上させるには、水素イオンが効率的に触媒層に到達するようにアイオノマの分布状態を最適化することが求められています。
本研究では、触媒層からアイオノマの分布状態のみを抽出することができる小角中性子散乱法に着目しました。大強度陽子加速器施設(J-PARC)(注)の装置を使って検証したところ、触媒層中の平均的なアイオノマ分布を反映する指標を抽出することに成功しました。その結果、さまざまな状態の触媒層の水素イオン伝導率を予測できるモデルを提示することができました。今回考案したモデルは、発電性能をさらに高められるようなアイオノマ分布の設計への活用が期待されます。
(注)大強度陽子加速器施設J-PARCは日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が茨城県東海村で共同運営している大型研究施設で、物質科学を含む幅広い分野に関連する世界最先端の研究が日々行われています。
タイトル: Equation Elucidating the Catalyst-layer Proton Conductivity in a Polymer Electrolyte Fuel Cell Based on the Ionomer Distribution Determined Using Small-angle Neutron Scattering
著者: Harada, M., Kadoura, H., Takata, S., Iwase, H., Kajiya, S., Suzuki, T., Hasegawa, N., Shinohara, A., Kato, S.
掲載誌: ACS Applied Materials & Interfaces
掲載日: 2023年8月31日
https://doi.org/10.1021/acsami.3c08432