メッセージ

移動から価値創造へ
クルマが作る新しい社会

日本の自動車産業の礎を築くことに貢献した豊田喜一郎は、実際技術と学術的研究とが密接に関わりあうことで技術が進歩していくものであるとつねに意識していました。創業当時、産業で国に報いる、産業報国を謳うトヨタにとって、裏打ちとなる学術的研究が非常に重要であり、いかなる事業環境においてもつねに事業の傍らに置き、経営者でありながら、生涯、研究に情熱を注ぎました。
1960年、トヨタグループの共同出資により設立された豊田中央研究所は、その志を受け継ぎ、「産業を創る」ことを基本理念としています。当社は、多様な企業群からなるトヨタグループの一員として存在し続けており、それはこれからも変わりません。

世界を走る自動車は2020年に約16億台と推定され、現在はその約10%に当たる1億5,000万台がトヨタ車です。人口増加にともなってモビリティの需要は今後もさらに拡大すると考えられ、人とモノの移動を支える自動車の役割は一段と大きくなるでしょう。
しかし、移動の自由には交通事故やエネルギー消費といった課題が伴います。私はこうしたネガティブな要素を限りなくゼロに近づける一方で、クルマが生み出す膨大な情報やエネルギーを社会へ還元し、走るインフラへと進化させたいと考えています。1億5,000万台のトヨタ車は、社会システムを構成する巨大なピースとして大いに期待できます。
この強力な基盤を活かし、トヨタグループがモビリティの価値を革新し続けるため、当社はさらに、世界中を走るクルマが社会に価値を提供することにつながる研究に取り組んでいます。物流を担い、産業の根幹を支え続けている自動車ですが、はりめぐらされた道路や燃料の恩恵を享受するだけではなく、情報やエネルギーのハブへと昇華し、さらにはクルマによる社会課題解決の可能性を広げていく――そんな未来の姿を描きます。

当社には多様な専門性を持つ約800名の研究人材と、研究を支援する約150名の企画・運営人材が集い、材料開発やエネルギー、量子ビームを応用した高度な分析技術、これからの科学技術の基盤となる量子分野まで幅広い領域の研究開発を先導しています。トヨタグループ各社と直結した環境を生かし、基礎研究から社会実装まで共に走り抜けられることが当社の強みです。
私が大切にしたいものは、年齢・性別・専門性や経験を問わず「前へ進む意志」と「未知の可能性を見いだす探究心」です。走るクルマを社会システムの重要なピースとして捉え、未来の社会基盤づくりに挑戦しながら、新しいモビリティの価値を創造し続けてまいります。
皆さまには、今後も当社の活動にご期待いただくとともに、当社の挑戦に温かなご支援を賜れれば幸いです。

代表取締役 CEO
古賀伸彦

代表取締役 CEO 古賀伸彦-写真

人・環境共生モビリティ社会の実現に向けて

豊田中央研究所は、トヨタグループの技術開発と科学研究を推進することで、学術の進歩と産業の発展により社会に貢献することを目指すために1960年に設立されました。
近年、エネルギー問題や気候変動対策に加え、世界の対立と分断が社会に影を落としています。こうした社会や経済の変化に適応すると同時に、変化の流れを創り出すため、将来を予測し研究成果を社会に実装していくことこそが、今の時代に求められる研究所としての生命線であると考えています。

現在、私たちは創立70周年を迎える2030年を新たな創業期と位置づけ、「人・環境共生モビリティ社会の実現」というスローガンの下で、次の時代を見据えた研究開発力の強化に取り組んでいます。
その一つが将来の情報社会の中核を担うと期待されている量子技術です。安全・安心のさらなる向上や、渋滞の緩和、エネルギーの効率利用を社会全体で実現するためには、モビリティが社会インフラと一体となって価値を創出していく必要があります。これまでの情報技術では困難な、低消費エネルギーで膨大な情報を高速に処理するための基盤として、高感度な量子センシングや量子情報処理などの取り組みを強化しています。
また、モノづくり産業が将来にわたり持続可能であるためには、エネルギーや資源の循環、労働力の確保、生産性の更なる向上といった社会課題の解決が不可欠です。そのために、当社がこれまで培ってきた材料科学、プロセス技術、知能化などの要素技術を融合し、人とAIが協働する知能化された研究開発基盤を構築することで、モノづくり産業を飛躍的に加速、拡張させていきます。

産業のリアルな現場から得られる課題を見極め、サイエンスとエンジニアリングをつなげる実践的な研究を通じて、世の中の役に立つ形で研究成果を創出できる研究人材が当社の強みの一つです。世界トップクラスの研究者、研究機関との組織的な連携をさらに広げることで、必要とされる研究力を磨き、トヨタグループの現場を通じて、研究成果を社会実装へと着実につなげていきます。また、これからの研究をリードする研究人材や、それを支える運営人材の雇用と育成を進め、研究組織としての実行力をさらに高めていきます。
私たちは「人・環境共生モビリティ社会」に向けた様々な研究開発を進め、社会に貢献できるよう挑戦し続けていきます。

代表取締役 所長兼CRO
志満津孝

代表取締役 所長兼CRO 志満津孝-写真
会社情報
PAGE TOP