リチウムイオン電池電極の乾燥過程の構造形成挙動を明らかに
当社の熊野尚美らが九州工業大学と共同で行った研究が Journal of Power Sources に掲載されました。
電気自動車の生産拡大に伴い、リチウムイオン二次電池の性能や生産性を高めることが求められています。電極シートの作成には溶媒を乾燥させる工程があり、素早く乾燥させるために高温処理を施すことがあります。一方で、乾燥条件によって電極成分の分布が不均一になる「偏析」という現象が知られており、電池の性能や耐久性に悪影響を及ぼすという問題がありました。
本研究では、電極シートの薄いスライスを作成して、各スライスの成分分布を解析するという手法で、偏析の挙動を解明しました。乾燥時の温度が高くなるのに伴って、電極シートの成分である導電助剤やバインダーが電極表面に移動することを捉え、この現象が電池性能に関係する電子抵抗や耐久性に関係する電極シートと集電箔の付着強度低下の要因になっていることを明らかにしました。本研究で得られた知見は、高性能化および高生産性を両立する電極の生産プロセスの確立に貢献します。
タイトル: Migration of Binder and Conductive Agent during Drying Process of Li-ion Battery Cathodes
著者: Kumano, N., Yamaguchi, Y., Akimoto, Y., Ohshima, A., Nakamura, H., Yamamura, M.
掲載誌: Journal of Power Sources
掲載日: 2024年1月30日
https://doi.org/10.1016/j.jpowsour.2023.233883