燃料電池の性能と耐久性を向上する多孔質酸化スズ触媒担体
当社の稲葉正哲らがトヨタ自動車と共同で行った研究が ACS Applied Materials & Interfaces に掲載されました。
近年、自動車向け固体高分子形燃料電池の適用先は、小型乗用車から大型商用車にシフトしつつあります。それに伴い、白金触媒の土台となる担体には耐久性と発電効率を両立することが一層求められるようになっています。高い発電効率を示す担体として多孔質カーボンが知られていますが、長期間使用すると酸化による劣化が生じるという耐久面での課題がありました。
本研究では、耐酸化性に優れた酸化スズを用いて、細孔径を精密に制御した多孔質担体粒子を作製しました。この触媒担体を用いた燃料電池の性能を評価したところ、カーボン担体より高い耐久性を示し、また、低湿環境下において高い発電効率を示しました。これらの性能向上は、「酸化スズの材料としての安定性」と「多孔質の構造的特徴」によるものであることが裏付けられ、多孔質酸化スズの燃料電池触媒担体としての有用性が明らかになりました。本研究成果は燃料電池の更なる普及に貢献することが期待されます。
タイトル: Synthesis of a Mesoporous SnO2 Catalyst Support and the Effect of Its Pore Size on the Performance of Polymer Electrolyte Fuel Cells
著者: Inaba, M., Murase, R., Takeshita, T., Yano, K., Kosaka, S., Takahashi, N., Isomura, N., Oh-ishi, K., Yoshimune, W., Tsuchiya, K., Nobukawa, T., Kodama, K.
掲載誌: ACS Applied Materials & Interfaces
掲載日: 2024年2月21日
https://doi.org/10.1021/acsami.4c01794