機械学習を援用する酸化還元電位の第一原理的予測
当社の陣内亮典がウィーン大学、VASP Software社と共同で行った研究が npj Computational Materials に掲載されました。
二次電池・燃料電池・電解・人工光合成などで現れる広範な電気化学現象を解き明かす際に、確認すべき物性が酸化還元電位です。酸化還元電位は物質がどの電位でどのように変化するかを示す最も基本的な電気化学物性である一方、「第一原理計算」によって予測するのが極めて難しいことが知られています。第一原理計算とは、波動方程式という物理原則を起点として、計算機シミュレーションのみを用いて物質の物性を予測するアプローチです。しかし、酸化還元電位の第一原理的な予測は、100万コア時間(1コアのプロセッサによる114年の計算)という多くの計算資源を要するものでした。
本研究では、機械学習を援用することで、粗い近似モデルから高精度モデルへと段階的に精度を向上させ、従来の50分の1の時間で第一原理計算結果を得る方法を構築しました。計算結果を3種類の金属イオンで検証したところ、実験で得られた値を高い精度で再現できることが分かりました。この手法は今後の電気化学の第一原理計算の礎となるものと期待されます。
タイトル: Machine Learning-aided First-principles Calculations of Redox Potentials
著者: Jinnouchi, R., Karsai, F., Kresse, G.
掲載誌: npj Computational Materials
掲載日: 2024年5月20日
https://doi.org/10.1038/s41524-024-01295-6