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第一量子化に基づく電子状態シミュレーションを実現するための量子回路を提案

当社の堀場貴裕らが行った研究が Journal of Chemical Theory and Computation に掲載されました。

新材料の開発に向けた高精度なシミュレーションに、量子コンピュータを活用することが期待されています。量子コンピュータで材料計算を行うには、量子ビットが示す量子状態を、電気伝導度や光学応答といった材料特性を左右する電子の状態に近似させることが必要です。電子状態の近似において特に問題となるのが「反対称性*注1」と呼ばれる電子の性質をどう満たすかという点で、近似させる量子状態自体に反対称性の制約を課す手法(第一量子化)と、近似させる量子状態の測定方法に反対称性の制約を課す手法(第二量子化)が知られています。第一量子化に基づく手法は、第二量子化より様々な電子状態を高分解能で近似できる可能性を有していますが、反対称性の制約を実装することが困難であるため、一般的には、その実装が容易な第二量子化に基づく手法が用いられています。

本研究では、第一量子化に基づく電子状態計算において、反対称性を満たす量子状態のみを生成可能な変分量子回路*注2の構成方法を初めて提案しました。また、簡略化した分子モデルである一次元水素分子を対象とした数値実験を行い、提案回路によって電子の基底状態に対応する反対称的な量子状態が正しく得られることを示しました。本研究は第一量子化による電子状態計算を量子コンピュータで行うことを可能にし、高精度な材料シミュレーションの実現に貢献することが期待されます。

注1:反対称性とは、電子などのフェルミ粒子の集団が本質的に有する性質であり、二つの粒子の座標の交換に際して全体の波動関数の符号が反転する性質を指す。
注2:変分量子回路とは、調整可能な量子ゲートを含むパラメータ化された量子回路である。回路の出力の測定結果に基づき、回路のパラメータを最適化することで、量子ビットが示す量子状態を所望の電子状態に近似させる。

タイトル: Construction of Antisymmetric Variational Quantum States with Real Space Representation
著者: Horiba, T., Shirai, S., Hirai, H.
掲載誌: Journal of Chemical Theory and Computation
掲載日: 2024年8月27日
https://doi.org/10.1021/acs.jctc.4c00167

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