自己組織化する分子を活用した均一配向ナノポーラスポリマーフィルムの合成
当社の溝下倫大が行った研究が Chemistry of Materials に掲載されました。
ナノスケールの細孔構造を持つナノポーラス高分子材料は、吸着材や光学フィルム、フィルターなど、多様な用途での活用が期待されています。しかし、細孔構造の長距離配向制御には強電場・磁場を印加するといった高エネルギーの投入や、特殊な原料分子の使用、高度な加工技術などが必要でした。
本研究では、ファイバー状に自己組織化する低分子を活用することで、均一配向ナノポーラスポリマーフィルムの効率的な合成を達成しました。この自己組織性分子と一般的な架橋性モノマーであるジビニルベンゼンの混合物が液晶-ゲル状態間で構造転移する性質を見出し、剪断印加や1 V/μm未満の弱い電場により配向させた液晶状態を経由してゲル薄膜を作製しました。その後、光重合によってジビニルベンゼンを架橋し、さらにファイバー状になった自己組織性分子の除去を行うことでその部分が細孔として残り、フィルム面内または面外方向に均一配向したナノポーラス構造を形成することができました。モノづくりにおける分子自己組織化の活用は、ナノ構造をもつ機能材料の効率的な作製に向けた重要技術になると期待されます。
タイトル: Preparation of Uniaxially Aligned Nanoporous Polymer Films via Photopolymerization Using Self-assembling Molecular Templates
著者: Mizoshita, N.
掲載誌: Chemistry of Materials
掲載日: 2025年1月28日
https://doi.org/10.1021/acs.chemmater.4c03295