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室温で感度2倍――SiCデュプレックス量子センサーのブレークスルー

当社の田原康佐らが量子科学技術研究開発機構 (QST) と共同で行った研究が『npj Quantum Information』に掲載されました。
近年、医療や材料・デバイス分野においてナノスケールの高感度・高精度な計測が求められており、大掛かりな冷却装置が不要な、常温動作する量子センサーが注目されています。量子センサーは結晶の“欠陥” に局在した電子スピンにレーザーを照射し、スピン状態に応じて変化する発光強度から磁場や温度を読み取る仕組みで、外界変化にきわめて敏感です。この量子センサーとしては、ダイヤモンド中の窒素空孔(NVセンター)は高性能ながら高価で集積化が難しいため、半導体加工技術を利用できるシリコンカーバイド(SiC)に形成されるシリコン空孔(VSi)が有望視されています。ところが、VSi の電子スピンは +3/2, +1/2, −1/2, −3/2 の4段階を取り、従来は1組(+3/2 ↔ +1/2 もしくは-1/2 ↔ -3/2 )の磁気共鳴のみを利用していたため、残り1組が背景光となり信号コントラストと感度を低下させていました。
本研究では、ノイズ抑制技術を駆使した高感度測定系を構築し、2本のマイクロ波を安定に同時照射して残りの1組(−1/2 ↔ −3/2もしくは+3/2 ↔ +1/2)も並行駆動する「デュプレックス操作」を室温で初めて実証し、光学コントラストと交流磁場感度を従来比約2倍に向上しました。必要な装置もシンプルな構成で済むため、SiC デバイス技術を活かした今後の応用研究の足掛かりとなる成果です。
本成果は、室温量子センシングの可能性を大きく前進させる一歩であり、固体量子センシングの社会実装の促進に寄与するものと期待されます。

本研究は、内閣府SIPプログラム「先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進」(管理法人:量子科学技術研究開発機構)によって実施されました。

タイトル: Quantum Sensing with Duplex Qubits of Silicon Vacancy Centers in SiC at Room Temperature
著者: Tahara, K., Tamura, S., Toyama, H., Nakane, J., Kutsuki, K., Yamazaki, Y., Ohshima, T.
掲載誌: npj Quantum Information
掲載日: 2025年4月5日
https://doi.org/10.1038/s41534-025-01011-2

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