人工光合成における電子伝達剤の価数変化をリアルタイム観察
当社の鈴木登美子らが東京理科大学と共同で行った研究成果の論文が、Chemical Communications HOT articles 2025に選出されました。
太陽光と水を用いて二酸化炭素(CO2)を資源に変換する「人工光合成」は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた重要な技術です。これまでに当社と東京理科大学は、2種類の光触媒粒子と1種類のコバルト(Co)錯体を水中に投入し、植物と同様の2段階光励起(Zスキーム)機構にて駆動する、高い生成物選択率(95%以上)を有する可視光CO2還元システムを開発してきました。水中のCo錯体イオンは、2種類の光触媒粒子間を行き来して電子を受け渡す電子伝達剤として機能しますが、この濃度は極めて希薄なため、その価数変化*1のリアルタイム観測は困難でした。
本研究では、大型放射光施設SPring-8の豊田ビームラインにおいて、その場観察法であるオペランドX線吸収分光法を用い、光触媒動作中のCo錯体イオン挙動のリアルタイム観測に初めて成功しました。
その結果、光照射に伴いCo錯体イオンが2価と3価の比率を変えながら定常状態に移行し、その後にCO2還元反応を連続駆動する挙動を明らかにしました。
本成果は、光触媒反応メカニズムの解明手法を高度化するものであり、今後の高効率な光触媒反応の設計につながることが期待されます。
*1 価数変化:イオンが電子を受け渡しすることで、その電荷(価数)が変化する現象。電子を失って価数が増加(酸化)したり、電子を受け取って減少(還元)したりする過程。
タイトル: Direct Observation of An Ionic Cobalt Complex Electron Mediator via Operando X-ray Absorption Spectroscopy in Photocatalytic Z-scheme CO2 reduction with (CuGa)0.3Zn1.4S2 and BiVO4
著者: Suzuki, M., T., Nonaka, T., Uyama, T., Sakamoto, N., Sekizawa, K., Yamaguchi, Y., Kudo, A., Takeshi Morikawa, T.
掲載誌: Chemical Communications
掲載日: 2025年11月13日
https://doi.org/10.1039/D5CC05617A





