多孔質シリコン負極の導電性向上でリチウムイオン二次電池の急速充電に期待
当社の川浦宏之らが行った研究が Journal of Power Sources に掲載されました。
リチウムイオン二次電池の容量拡大が求められるなか、新たな負極材料としてシリコンが注目されています。低い作動電位を持つシリコン負極は、現在広く使われる黒鉛負極に比べ、約10倍の容量増加が期待されています。一方で、導電率の低さや充放電時の体積変化による電池寿命の減少といった課題も知られています。当社はこれまでに、シリコンーアルミニウム合金粉末を前駆体として、酸によりアルミニウムを溶出するというアプローチで、多孔質シリコンを大量合成する方法を見出しました。多孔質化によりシリコンの体積変化を抑え、電池を長寿命化、大容量化することに成功しましたが、導電率の低さは依然として課題でした。
本研究では、導電率を向上するために、遷移金属とシリコンから成る遷移金属シリサイドに着目しました。シリサイドが多孔質シリコン内部に分散するように合成方法を工夫することで、導電率を向上させることに成功しました。多孔質シリコンによる長寿命化・大容量化に加え、導電性も向上させる本成果は、リチウムイオン二次電池の高性能化に貢献することが期待されます。
タイトル: Scalable Synthesis of Porous Silicon Electrodes for Lithium-ion Batteries via Acid Etching of Atomized Al–Si Alloy Powders
著者: Kawaura, H., Suzuki, R., Nagasako, N., Oh-ishi, K.
掲載誌: Journal of Power Sources
掲載日: 2024年5月25日
https://doi.org/10.1016/j.jpowsour.2024.234739