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電極電位の基準「絶対標準水素電極電位」を第一原理的に予測

当社の陣内亮典がウィーン大学、VASP Software社と共同で行った研究が Chemical Science に掲載されました。

電極電位は電極の構造や組成に応じた固有の値を持ち、電池の起電力や電極反応の速度を左右する、電気化学上極めて重要な指標です。電極電位の測定はある定められた基準との比較を通じて行われ、その最も基本的な基準となるのが絶対標準水素電極電位注1です。しかし、これまで絶対標準水素電極電位を『第一原理計算』による純粋な計算機シミュレーションのみで決定することは極めて困難でした。これは、電気化学の根幹をなす基準を、基礎物理定数以外の実験値に依存しなくては定められないことを意味する重要な問題でした。

本研究では、当社がこれまでに構築してきた機械学習を援用する酸化還元電位の第一原理計算法を拡張することにより、絶対標準水素電極電位を精密に計算することに成功しました。これにより、絶対標準水素電極電位を基準とする広範な電極電位を第一原理計算という統一的な枠組みによって求めることが可能となりました。この方法は燃料電池の空気極触媒に応用され、プラチナ触媒に有機分子を付与すると電極近傍の水素結合ネットワークが乱れ、触媒活性が向上する、という新しい活性向上機構の提示に活用されています注2

注1)絶対標準水素電極電位:真空中の電位をゼロと定義して測定した標準状態の水素ガスと水溶液中の陽子とを平衡にする電子の電位。
注2)Jinnouchi, R., Minami, S. The Journal of Physical Chemistry Letters. 2025, vol.16, pp.265–273.
(https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.4c03437).

タイトル: Absolute Standard Hydrogen Electrode Potential and Redox Potentials of Atoms and Molecules: Machine Learning Aided First Principles Calculations
著者: Jinnouchi, R., Karsai, F., Kresse, G.
掲載誌: Chemical Science
掲載日: 2024年12月23日(オンライン)
https://doi.org/10.1039/D4SC03378G

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